昨年度に引き続き、今年も平成29年度の補正予算によって、IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金)制度がスタートした。予算も昨年度の100億円から5倍の500億円に引き上げられ、10万社以上の中小企業がその恩恵を受けることになる。
では、今年度のIT導入補助金は昨年度と何が違うのか、また、どんな人が、どのような製品やサービスに対して利用できるのか、内田洋行 経営企画統括部 第2企画部 企画課 課長代理の木口孝司氏に聞いた。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の生産性向上の実現を図ることを目的に、中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入する経費の一部を補助するもので、平成29年度は、購入したITツール費用の半分(15万円~最大50万円)が補助される。
補助金の受給資格があるのは、基準を下回る資本金あるいは常勤従業員数の国内で事業を営む企業。基準は業種で異なり、小売業であれば資本金5,000万円以下、常勤従業員が50名以下。製造業、建設業、運輸業であれば、資本金3億円以下、常勤従業員が300名以下だ。個人事業者も対象になる。ただし、大企業の子会社や風俗営業は除外される。
木口氏よれば、資本金あるいは従業員のどちらかの条件を満たせばいいという。
補助対象となるのは、ソフトウェア、クラウド利用費、導入関連経費等やホームページ制作費用などで、ハードウェアは除かれる。基本的に、新規で導入することが条件なので、更新や改修費用は補助対象外となる。
また、これらにオプションとして加算された、ホームページ利用料、クラウド利用料、保守・サポート費、導入設定、研修費用、セキュリティ対策費なども対象になる。
商品やサービスは、あらかじめ登録されたIT導入支援事業者から購入する必要があり、IT導入支援事業者は、事前に取り扱う製品(ソフトウェア、サービス等)の登録申請を行い、外部審査委員会の審査を経る必要がある。
すなわち、ITツールを導入し補助金を受けるためには、登録済みのIT導入支援事業者が提供する、登録済の製品・サービスから選択する必要がある。具体的にどのような事業者がおり、どのような製品やサービスを提供しているかは、IT補助金のWebにある「IT導入支援事業者検索」や「ITツール選択ナビ」を使って検索可能だ。
昨年度と何が違うのか
IT導入補助金は昨年度も実施されたが、今年度は制度の変更がある。
まず、予算額が100億円から500億円に拡大された。一方で、1件あたりの補助金は、補助率が2/3から1/2に、上限額も100万円から半分の50万円に減額された。しかし、その分、補助金を受けられる事業者は10万社以上と、恩恵を受けられる社数は大幅に拡大した。
木口氏は「少なく見積もっても1000億円規模のマーケットが出現したというのが現実だと思います」と語った。
補助金額以外では、手続きが電子申請化された点が昨年度と大きく異なる点だという。
「昨年度は紙で行いましたが、今年は、すべて電子申請化されているので、パソコンから申請する必要があります。マイナンバーを利用するため、登記簿謄本も必要なくなりました。マイページという自社向けのページも用意され、別にIT導入支援事業者向けのページもあります。ここで、ユーザー企業の入力支援も行えます」(木口氏)
そのほか、申請の際、決算情報や事業計画などを入力する「経営診断ツール」での診断が必須になったほか、「SECURITY ACTION」のホームページ上で「★ 一つ星」または「★★二つ星」セキュリティ対策自己宣言を行う点も、手続き上の大きな違いだという。
「経営診断ツール」では、売上高、利益、借入金、手形などの決算情報のほか、経営理念や経営意欲、自社の強み/弱み、IT投資状況、目標、課題、対策などを入力すると、財務分析結果が出力される。
「SECURITY ACTION」は、情報処理推進機構(IPA)が実施する中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度。一つ星では、OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!、ウイルス対策ソフトを導入しよう!、パスワードを強化しよう!、共有設定を見直そう!、脅威や攻撃の手口を知ろう!の「情報セキュリティ5か条」に取組むことを宣言する。申請に際しては、「★一つ星」もしくは「★★二つ星」のいずれかを宣言している必要がある。
また、ITツール導入により3年後の伸び率が1%以上、4年後の伸び率が1.5%以上、5年後の伸び率が2%以上またはこれらと同等以上の生産性向上を目標とした事業計画を作成することが必要になる。
なお、補助金を受けた場合は、IT導入支援事業者を通じて、生産性向上に係る情報(売上、原価、従業員数及び就業時間)等を事務局に5年間報告することが義務付けられる。
これらについては、IT導入支援事業者に相談するのが基本だが、木口氏は、もし相談相手がいない場合には、取引のある金融機関やよろず支援拠点に相談するのがいいとアドバイスした。
木口氏が語った「よろず支援拠点」は、経済産業省が平成26年6月から、各都道府県に1カ所ずつ設置した中小企業・小規模事業者向けの経営相談所。売上拡大、経営拡大、創業、廃業など、あらゆる経営相談に無料で応じてくれる。
内田洋行はコンソーシアムを組んで対応
木口氏によれば、内田洋行では、50社以上の企業で構成されるコンソーシアムを組み、それぞれの企業が取り扱う製品やそれらの組み合わせ製品を数多く提供するという。
具体的には、昨年度も好調だった「Usolia墓石石材業トータルシステム」やサイボウズの「Kintone」、OBCの「働き方改革対応導入モデル」、ERP/基幹業務システムの「スーパーカクテルデュオシリーズ」のほか、RPA対応製品も用意している。
内田洋行 経営企画統括部 第2企画部 部長 中島浩氏は、「来年、消費税がアップしますので、請求フォーマットを変更する必要があります。そうであれば、この機会に対応することも可能だと思います」と語った。
なお、IT導入補助金の受付は、第一公募が4月20日から6月4日まで、第二公募が6月中旬から8月中旬(予定)、第三公募が8月中旬から10月上旬(予定)となっている。詳細はサービスデザイン推進協議会のWebを参照されたい。