実験で行われた街灯のスマート化は、あまり手間やコストをかけずに実現できるのだという。現在使っている灯具はそのままに、ポール内に後付けでコントローラーを設置。あとはスマートライティングを遠隔操作するゲートウェイを近くに設置するだけで、スマート化が完了する。環境などにもよるが、ゲートウェイ1台につき、200本ほどの街灯と接続することができる。

もちろん、ガラス部分がくすんでいては、照明の効率が落ちてしまうので、灯具の劣化が激しい場合は取り換えるのが好ましい。

  • 土師山公園に設置されたゲートウェイ

    土師山公園に設置されたゲートウェイ

スマート化が完了したあとも難しい操作は必要ない。「Kinetic for Cities」と呼ばれるシスコのスマートシティプラットフォームで、マップ上に記された街灯を選択して設定を変えるだけ。1本1本に対して照度の調整などが可能だ。

また、「都度、オン/オフや照度の調整を遠隔で行わなければならないのか」というと、そうではない。街灯内部のコントローラーが緯度や経度、日照時間、日没時刻、照度といった設定を学習するので、基本的に一度内容を覚えさせてしまえば、あとは自動で調整してくれるのだ。そのため、万が一、ゲートウェイに不具合などが発生し、通信が途絶えてしまっても、内部の記憶をもとにオン/オフや照度の調整を自動で実行。また、内部のコントローラー部分が故障した場合は、100%の明るさで煌々と灯りをともすのだという。

  • Kinetic for Citiesの管理画面

    Kinetic for Citiesの管理画面。画像は街灯が消えているときの表示

故障時の復旧についても、従来は定期点検や住民からのクレームで故障に気づいてから復旧作業をしていたが、スマートライティングの場合は原因がすぐにわかるので、即座に復旧作業を開始することが可能。監視と保全性の面でも効果的だといえよう。

シスコのスマートライティングは自動の照度調整によって節電面や保全面で効果をあげた。しかし、同実験はあくまでスマートシティの一端に過ぎない。シスコはKinetic for Citiesで複数のデータを組み合わせ、"オールインワン"でスマートシティ化を目指す。1つの画面で複数のデータを取り扱うことで、さまざまな事象の相関関係がわかるようになるという。

また、ライティングに加えて駐車場やゴミ箱などとつながっていくことで、たとえば、「パーキングで車が停まるまで照度を落としておいて、車が停まった段階で照度を高める」「防犯カメラの振る舞い検知で、不審な行動を見つけると、通報すると同時に照明の明るさを瞬時に100%にする」といった使い方ができるようになるはずだ。

スマートライティングの実証実験は、スマートシティ実現という未来への道筋を照らし始めたと言えるだろう。

  • 今回の実験では防犯カメラとのネットワーク接続を実現

    今回の実験では防犯カメラとのネットワーク接続を実現。人流解析によって、これまで明かりは不要だと考えられていた早朝4~5時から、人通りが増え始めることが判明した