--SAP、Oracleなどもクラウドに注力している。世界でも日本でも競争が起こっているが、これら競合をどう見ているか?--
小出氏: クラウドに対する不安が払拭され、価値の理解が進んだ。使えるところはクラウドを使おうという機運が高まっているが、「この領域はオンプレミス」「あの領域はクラウド」と使い分けていくことになると思う。
企業はクラウドを採用する際に、仕様やスペックだけで決めるということはない。クラウドの難しさは、使い込んでいただかなければ価値が出ないという点にある。そうなると、クラウドでの実績が豊富で、利用が進む中で問題が出てきた時にサポートや解決ができるという総合力でベンダーを評価すると考えられる。
クラウドのビジネスはPCやサーバを売るのとは違う。使い込んで初めてビジネスの変革につながるなどの価値が出て、それを体感してもらうのがサブスクリプションビジネス。解約せずにずっと使っていただくというのは大変なことだ。そのため、当社は、売り込み時のエンジニアよりも、ポストセールスのエンジニアのほうが多い。お客さまによるクラウドの使い込みを支援し、結果が出るところまで一緒にやるという踏み込んだモデルを取っている。
われわれのサービスは世界15万社に使っていただいており、そこで生じた課題や問題を共有することで早期解決を実現している。これは当社の差別化の要因になっていると思う。
--CEOになって3年半が経過した。前職の日本ヒューレット・パッカード(HPE)とどのような違いがあるか?--
小出氏: Salesforceは創業20年に満たない企業なので、成熟した企業であるHPEとの比較はできない。時代背景も違う。
今、従業員が3年半で500人から倍増するなど、一番成長している時に経営の舵取りをしている。クラウドという新しいテクノロジーも、日本ではやっと浸透し始めたところだ。成長、そしてイノベーションを起こす側であるという2つの点が、この会社の醍醐味だと思う。
--2018年はどのような目標を掲げているか?--
小出氏: 世界レベルでは、成長を加速させるためにさまざまなアクションを取っている。今年のDreamforceでも、製品ポートフォリオが拡大していることを感じてもらえたと思う。これまでBtoBのCRMの会社というイメージだっただろうが、Eコマース企業、デジタルマーケティング企業などを買収し、BtoCの領域にも拡大している。BtoBからBtoCまでトータルなプラットフォームを提供する会社を目指して、ここ数年戦略を進めてきており、2017年はそれが結果として現れたと思う。2018年は、それを加速する年になるだろう。
日本でも、デジタルマーケティングは堅調に伸びている。デジタルマーケティングとEコマースでBtoCのCRMを展開するとなると、「顧客情報をきちんと管理しよう」「コールセンターも整備しよう」など、新たな施策についてマルチクラウドでデザインするという事例が増えている。われわれはポートフォリオを拡大したことで、お客さまを支援できる範囲が広がっており、「デジタルトランスフォーメーションをやりたい」という時に、支援できる材料が増えた。2018年はこれを実行に移していく。