電通国際情報サービス(ISID)は12月27日、トヨタ自動車向けに開発した遠隔地3D車両情報共有システムを用いた集合教育の実証実験に成功したと発表した。

遠隔地3D車両情報共有システムは、車両の3D設計データを、VR技術を用いて実物大のリアルな3D画像としてヘッドマウント・ディスプレイ上に再現し、遠隔地にいる複数のユーザーが、同じ空間で1台の車両を眺めているかのような仮想環境を提供するシステム。

車両の3D画像に加え、機構のアニメーション表示、モデルと視点の自由な移動、指示箇所へのマークの付与、ドキュメントの閲覧、音声会話、アバター表示等の機能を有しているという。

トヨタでは従来から、新型車の機構や構造に対するサービス技術情報を共有するため、世界中の拠点から日本の多治見SCにエンジニアを集め、実車を用いた集合教育を行っているが、コストや時間的な制約もあり、大勢の参加には限界があった。そこで、これまで参加できなかったエンジニアへも、より効率的かつ効果的に教育を行える環境の実現に向けて、VRを活用した遠隔地3D車両情報共有システムを開発した。

今回の実証実では、Toyota Motor Thailand(タイ)、Toyota Motor Philippines(フィリピン)、PT. Toyota-Astra Motor(インドネシア)およびトヨタ 多治見サービスセンター(日本)を結ぶ新型レクサスLSの技術講習会を対象に実施され、約50名が参加。実車による集合教育を十分に補完し、教育の充実が可能であることが確認されたという。システム構築環境としてパブリッククラウドを活用し、各拠点からインターネット回線で接続する構成とした。

集合教育は、新型レクサスLSのサービス技術習得をテーマに、多治見SCの講師がアジア3拠点のエンジニアに向けてVR空間上で講習する形式で実施され、バッテリーの交換方法や新設部品の構成等約10項目の技術情報説明が行われた。

  • VR空間上に表示されるレクサスLSの外観

従来の講習会と同様の説明に加え、実車を使った講習では見ることができない車両内部の構造を確認したり、リアルタイムにカットモデルを作るなど、VR映像ならではの講習が盛り込まれ、VRの活用によりこれまで以上に理解が深まることが確認できたという。

  • 車両下からの視点で内部の機構を確認

  • 講師視点の映像では、各拠点のアバターが講師の指し示す部品を覗き込んでいるのが分かる

またグローバルの複数拠点かつ多人数に向けて、VR映像を一斉に配信し、遅延なくコミュニケーションがとれることも実証されたという。

ISIDは今回の実証実験で確認された成果と課題を踏まえ、本システムのさらなる機能向上を図り、トヨタにおける本格導入を支援するとともに、今後は様々な業種、業態の製造業に向けて本システムを提供していく計画だという。