シスコシステムズは12月5日、都内で記者会見を開き、卓球の石川佳純選手と張本智和選手とアスリートアンバサダー契約を締結したと発表した。同社は、最新のテクノロジーで両選手の競技活動をサポートするとともに、スポーツの発展とイノベーション推進に貢献するという。

  • 石川佳純選手

    石川佳純選手

今回、同社は両選手が抱えている課題や要望をヒアリングした上で、それらの課題を解決すべく、選手、コーチ、チームメンバーと協力し、テクノロジーを活用した新たなトレーニング方法や戦い方を築いていく。最初の試みとしては、ビジネスコミュニケーションを統合したクラウドサービス「Cisco Spark」など最新のコラボレーション技術を選手に提供し、選手やコーチ、サポートチーム間の円滑なコミュニケーションをサポートする。

例えば、海外遠征などで選手が離れた場所にいても、いつでも、リアルタイムに、かつ安全に試合の動画や情報を共有しつつ、試合の対策検討やコーチから選手へのアドバイスなどを可能にする。また、張本選手にはネットワークを通じた学習環境や同社が持つ多様な学習コンテンツの提供などを通じ、勉学と競技活動の両立ができるように支援していく。

シスコシステムズ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏は「卓球は老若男女問わず楽しめるスポーツであり、両選手はナショナルチームの一員として、年間を通じてアジア、ヨーロッパを中心に転戦している。練習時・日常的に選手とコーチが同じ拠点とは限らず、家族とのコミュニケーションも難しいため、われわれのコラボレーションテクノロジーを活用し、選手とコーチ、家族が離れた場所でもコミュニケーションができる環境を提供する。また、単にビデオを活用して遠隔地から把握するだけでなく、練習時のデータをリアルタイムに共有・分析し、その場で練習に反映させていくことも可能になり、競技活動に貢献していきたいと考えている」と、期待を寄せていた。

  • シスコシステムズ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏

    シスコシステムズ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏

また、シスコシステムズ 専務執行役員の鈴木和洋氏は「すでに、われわれの製品は世界35カ国550を超えるスタジアム/アリーナで採用されている。世の中はIoT時代を向かえ、さまざまなものがネットワークにつながり、新しいサービス・ビジネスが登場している状況となっており、われわれはファン、スタジアム、アスリート/チームをつなぐことで、新しい事業機会を創出することを目指す。ファンに対しては、安全・快適なWi-Fiサービスのほか、スマートフォンで撮影した映像をSNSに投稿するなど、新しい多様な楽しみ方の体験を提供する。アリーナ/スタジアムの関係者には、フィールドカメラの映像を大型スクリーンやサイネージに提供することで新たな広告機会を提供し、アスリート/チームには遠征が多い場合でも簡単・確実・安全につながるビデオ会議の仕組みや、パフォーマンスデータを分析することでトレーニング・ゲームプランに活かしてもらいたい」と、強調した。

  • シスコシステムズ シスコシステムズ 専務執行役員の鈴木和洋氏

    シスコシステムズ シスコシステムズ 専務執行役員の鈴木和洋氏

続けて同氏は「アスリートに対して貢献できるテクノロジーはネットワーク、コラボレーション、データ分析、セキュリティの4つとなる」と説明する。

ネットワークは、実績を有するネットワーク技術により、競技データを取得し、必要な場所に届ける。コラボレーションに関しては、世界中どこにいても離れた選手と必要なときに情報が共有を可能としている。また、データ分析については、選手のパフォーマンスデータを取得・分析・可視化する。セキュリティでは選手の個人情報やパフォーマンスデータを守るという。

  • アスリートに対して貢献できるテクノロジーの概要

    アスリートに対して貢献できるテクノロジーの概要

会見では、コラボレーションとデータ分析のデモを実施した。コラボレーションでは、Cisco Sparkを用いて選手とコーチが離れた場所にいても、試合・練習の動画を一緒に観ながら作戦会議を行い、データ分析では練習字の打球の速度やコースなどをリアルタムでトラッキング(データスタジアムが協力)し、見える化した画像を離れた場所のコーチに共有し、アドバイスをもらうという設定で進めた。

  • ラリーを行う石川選手

    ラリーを行う石川選手

  • データスタジアムのトラッキングシステムによる取得データの表示画面

    データスタジアムのトラッキングシステムによる取得データの表示画面

今後、同社はJリーグ/プロ野球/ラグビートップリーグなど、さまざまなスポーツのデータ収集や分析、配信を行うデータスタジアムと協力する。同社の持つノウハウやシステムとテクノロジーを組み合わせることで、選手に対して試合やトレーニングに関するデータ分析を安全に提供し、選手強化のサポートを行うための仕組みづくりの可能性を模索するという。

アスリートアンバサダーとして、今後シスコにどのようなことを期待しているのかと問われた石川選手は「母がコーチを務めていますが、海外転戦が多いため時間を共有できないときがあります。しかし、シスコシステムズさんのサポートを受けることで密なコミュニケーションが可能になるのではないかと考えています」と述べた。

張本選手は都合によりビデオ出演となったが、同選手は「遠征で家を離れることが多いため、家族やコーチ、ファンとつながれるネットワークは大切であり、シスコシステムズさんに競技活動を支援していただくのは大変嬉しく思います。シスコさんのサポートの下、卓球と学業を両立させて二本のエースとして活躍できるように頑張ります」と、抱負を語った。

そして、鈴木みゆき氏は「われわれは2020年に向けて『All Connected. Anything Possible.』を掲げており、取り組みの1つとしてスポーツやコンサートの観客に新たな体験を提供するスポーツ&エンターテイメントの分野に注力している。今回、石川選手と張本選手をアスリートアンバサダーとして迎え、IoTやデータ分析、コラボレーションなどのテクノロジーを活用し、いかにアスリートの戦い方改革を支援していくかに焦点を当てる」と、意気込みを示していた。

  • 左から鈴木社長、石川選手、張本選手、鈴木専務

    左から鈴木社長、石川選手、張本選手、鈴木専務