PwC Japanグループは11月22日、東京・大手町にエクスペリエンスセンターを開設した。

同センターは、BXT(Business=ビジネス、Experience=エクスペリエンス、Technology=テクノロジー)のコンセプトを核に、カスタマーエクスペリエンスの分析に基づいて企業のビジネスを再構築し、デジタルテクノロジー によるイノベーションを創出することを目的としている。

PwC Japanグループは、同エクスペリエンスセンターにおいて、ブランド・マーケティング戦略策定、カスタマーエクスペリエンスのデザイン、デジタルサービスやプロダクトのラピッドプロトタイピング、カタリストによるワークショップなどのサービスを提供する。

クリエイティブ・エージェンシーが得意とする創造性と、コンサルティング・ファームが担う複雑な課題解決スキルの両輪を兼ね備え、顧客企業のデジタル領域におけるイノベーションをよりスピーディに実現することを目指す。

ここ最近、「イノベーション」「共創」をキーワードとする場を設ける企業が増えているが、PwCの施設は他社とどう違うのだろうか。

予測不可能なものからイノベーションが生まれる

同センターを披露する記者説明会は、作曲家の松武秀樹氏とPsychic VR Labによるパフォーマンスから始まった。パフォーマンスは、松武氏のシンセサイザーによる音楽に合わせて、VR映像が流れるといったものだ。

左から、作曲家の松武秀樹氏、Psychic VR Labのクリエイター

Psychic VR LabによるVR映像

PwCコンサルティング デジタルサービス日本統括 パートナー 松永エリック・匡史氏

オープニングのパフォーマンスが終わった後に、PwCコンサルティング デジタルサービス日本統括 パートナーの松永エリック・匡史氏が登場した。同氏が日本のエクスペリエンスセンターの責任者となる。

松永氏は、「松武氏が奏でるシンセサイザーの音は人間が作り出すアナログなものであり、今回流したVR映像はシンセサイザーの波形をもとに作り出したコンテンツとなっている。音楽は人の操作によるズレが魅力であり、ズレがグルーブを生む、これこそがデジタル」と話し、オープニングのパフォーマンスとエクスペリエンスセンターの関連性を説いた。

続いて、松永氏はエクスペリエンスセンターのコンセプト「Live JAM」を紹介した。「Live JAM」は、「Collaboration」「Unpredictability」「Innovation」の3つの柱から構成される。Unpredictabilityは「予測不可能」という意味だが、「コラボレーションによって、これまでの経験や知識からは予測できないものを生み出し、そこからイノベーションが生まれる」のだという。

そして、デジタルとは「単なる技術ではない。クリエイティブな問題解決のことであり、ユニークな顧客体験の構築であり、ビジネスのパフォーマンスを加速すること。つまり、ビジネス・社会の在り方の再創造そのもの、未来を発明すること。これを実現するのが、エクスペリエンスセンター」と、松永氏は語った。

未来を発明するには、既存のビジネス手法ではかなわず、無からイノベーションを生み出すことが必要だという。「もうベスト・プラクティスはいらない。ゼロから生み出すことがデジタル」と松永氏。そこで、同社はアーティストのような顧客体験をビジネスの世界にも持ち込む。

松永氏が「ゼロ」「予測不可能」ということにこだわるのは、今、どんなに大きな企業もいつなくなってもおかしくない状況にあるからだ。実際、「今日の経営戦略は、今の業界がなくなったらどうする」ということから、議論が始まっているという。

エクスペリエンスセンターの施設の一部。レッドカーペットには、エクスペリエンスセンターで作り出したものが世の中に出していく"winning road"という意味が込められている

さらに、説明会では、松武氏と書家の神郡宇敬氏によるライブ・パフォーマンスも披露された。松武氏の演奏に合わせて、神郡氏が文字を書いた。神郡氏は、作品について「円と直線によって、さまざまな心を表している」と説明した。コラボレーションを行う上で、いろいろな人の心と心が触れ合うことになる。作品の中のスペースについては、「可能であれば、エクスペリエンスセンターに来た人に何かを書いてもらうことで、コラボレーションを広げてもらいたい」とした。

左から、書家の神郡宇敬氏、神郡氏による作品

松永氏は、同社が目指している「デジタル」の世界を言葉だけで表現することは難しいため、アーティストによるパフォーマンスを披露したと述べていた。残念ながら、この記事からパフォーマンスの模様をお届けすることはできないのだが。

イノベーションを起こすにあたり、これまでの手法では通用しない――こうした内容は、最近、よく耳にするフレーズだ。では、どんな手法を用いるべきかについて、まだ正解は出ていない。

松永氏は、同社のエクスペリエンスセンターの差別化のポイントは「人」と述べた。最近、デザイン・シンキングが注目を集めているが、「本当のデザイン・シンキングを語ることができる人は少ない」と語った。同社で、こうしたことができる人をそろえているという。