アプリで可能にすること

アプリ側では心拍数の変遷、運動プログラムの運動強度、目標運動強度、リカバリー率、安静時心拍数遷移、中強度の運動達成時間の把握、グループ機能、フィードバックなど複数にわたる情報が把握できる。運動強度の目標設定は、体調により安静時心拍数が日々変動するため、強度の強弱を自動・任意設定ができる。運動プログラムの違いによる運動量を把握・可視化するために、自動的にトリガー(事前のプログラムを組み込む)を入れる仕組みを設けており、運動のフィードバックが可能だ。

また、グループ機能により、グループごとのプログラムを持つことで、モチベーションの向上につながるという。リカバリー率は、例えば安静時状態の心拍数が70だった場合、猛ダッシュした後に安定時心拍数まで何%回復したかなどを可視化し、個人の体力指標を把握することができる。

スマートフォンの画面上でさまざまな情報が得られる

渡辺氏は、これらのアプリ機能の中で特に「中強度の運動達成時間の把握」を重要視しているという。これは、東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長の青栁幸利氏が提唱しているものだ。

渡辺氏は、青柳氏が提唱する中強度の運動に関して「運動強度は弱すぎても強すぎてもよくないため、中強度の割合を増やしていくことが望ましいが、これまでは中強度の運動の把握が困難だった。アプリで安静時心拍数を計測し、年齢を入力すると年齢に見合った上限値が設定され、例えば40代の人の安静時心拍数が70の場合、上限値は180に設定される。この際、上限値180までの運動を行うわけではなく、目標運動強度というものを算出し約60~70%(最大酸素摂取量の約40~60%)の強度で運動すれば身体的に適している」と、説明する。

多くの企業で、多様な活用を

さまざまな機能を備えたMiKuHaは発売前ということもあり、可能性は未知数だ。もちろん、これまで同社の事業の中心となるスポーツ分野への展開も想定しているものの、一概に「運動」はスポーツ分野に限定したことではないため、MiKuHaを契機にそのほかの分野へのアプローチを重視しているようだ。

当初、筆者は運動を習慣的に行うコンシューマ向けに重きを置いているものだと想定していたが、主なターゲットはBtoBだということも特筆すべき点と言えるだろう。対象としては、高齢者のリハビリ施設、工場・建築現場、フィットネスクラブなどを想定している。リハビリ施設ではデータ自体をプリントアウトし、経過観測に役立てることができるため、密なコミュニケーションが図れるという。

また、工場・建築現場では作業員の状態をデバイスをつなげて指標化するなど、労務環境向けを想定している。フィットネスクラブでは、普段の運動管理が必要な場合は個人の情報をフィットネスクラブが確認するとともに、個人がフィットネスクラブにおける運動状況を把握する仕組みを備えている。これに加えて、グループ内での活用や同社が全国各地で管理・運営するスポーツ施設などでの活用を予定している。

渡辺氏は「いろいろな場面で活用してもらいたいと考えており、多様な企業と実証検証などで新たな活用方法を模索している。世の中には多くのスポーツセンサ・IoTは存在するが、それらの製品との組み合わせが重要だ」との認識を示しており、今後のMiKuHaの可能性に期待したい。