セグメント別の営業利益率では、アドバンスディスプレイシステムが低水準にとどまった

差し当たり好況にも思えるアドバンスディスプレイシステムだが、問題がないわけではない。ひとつが、営業利益率が3.1%に留まっている点だ。白物家電や太陽光発電などを含むスマートホームの営業利益率が7.0%、複写機をはじめとするスマートビジネスソリューションの営業利益率が5.5%であり、アドバンスディスプレイシステムの営業利益率の低さが目につく。

野村氏は、「この利益率には満足していない。IGZOの強みなどを生かして、付加価値を高めた提案をしていくほか、利益率が高い中小型ディスプレイを強化していく。テレビ向けの大型ディスプレイの利益率は高くはないが、赤字にはなってない。これからも収益性は重視していくことになる」と説明する。

だが、中小型ディスプレイによって成長戦略を描いたのは前経営陣と同じだ。需要変動が激しく、価格下落の動きも著しい競争の激しい分野で、従来の経営陣とは違う成果につなげることができるかが注目される。

もうひとつは、収益性の高い中小型ディスプレイの分野で、有機ELが台頭していることだ。サムスンがGalaxyシリーズで先行しているのに加えて、iPhone Xでも有機ELを搭載。わずか数分で予約数量に達するなど、人気を博しているのは周知の通りだ。

野村氏は、「シャープも、有機ELを2018年4~6月に出していくスケジュールは変わらない」とする一方、「有機ELとの競合という点では、IGZOの強みを生かすほか、18:9の液晶ディスプレイによる提案も可能になる。有機ELは1社独占であり、供給にも課題がある。液晶の強みを発揮できる領域は大きく、決して弱含みというわけではない」と反論する。

今後、液晶対有機ELという構図が鮮明になるなかで、液晶ディスプレイの強みをいかに訴求し、維持できるかがカギになる。

営業利益と経常利益、当期純利益を上方修正、"目指す未来"に光明

全セグメントで売上は伸長した

一方で、アドバンスディスプレイシステム以外の業績も好調だ。スマートホームの売上高は前年同期比10.2%増の2906億円、営業利益は41.2%増となる204億円と、大幅に伸張している。

「携帯電話では、フラッグシップモデルとなるAQUOS Rを中心に増収。さらに、コードレス掃除機のRACTIVE Airやプラズマクラスターイオンを搭載した洗濯機といった白物家電も好調に推移している。エネルギーソリューション事業も底堅い推移だ」(野村氏)

また、スマートビジネスソリューションの売上高は1.9%増の1627億円、営業利益が20.8%減の89億円。企業向けのサイネージが好調であったのに加え、海外での販売会社の買収などの成果もあり、海外での売上げが拡大としたという。「価格下落の影響を受けたことで減益になったが、コストダウン効果によって、黒字を維持した」という。

さらに、IoTエレクトロデバイスの売上高は前年同期比8.5%増の1922億円、営業利益は前年同期の15億円の赤字から36億円の黒字に転換した。「スマートフォン向けカメラモジュールや半導体、レーザーなどの独自デバイスの販売増加。さらにはモデルミックスの改善効果、コスト改善の効果により黒字転換した」とした。

今回の好調な業績を背景に、シャープは、2017年度通期業績見通しを上方修正。売上高は、経済動向などの不確定要素により前回予想(前年比22.4%増の2兆5100億円)を据え置いたものの、営業利益は5月の公表値に対して30億円増となる前年比48.9%増の930億円に、経常利益は80億円増の前年比247.0%増の870億円、当期純利益は100億円増で前年の248億円の赤字から690億円への黒字転換を目指すとした。

「上期の実績を踏まえ、営業利益と経常利益、当期純利益を上方修正した。下期においても、これまでの流れを止めることなく、事業の拡大を図り、着実に通期業績予想を達成するとともに、利益率も上期を上回るように収益率の改善に取り組む」と野村氏は話す。

最終黒字化をより確実なものにする上方修正となったといえる今回の発表。前年同期とはまったく異なるシャープの姿がそこには明らかだ。