アップルはiPhoneの会社である。誰もが知っていることだが、いかにiPhoneに依存しているのかを知ると、アップルの見方は変わる。iPhone 8シリーズが発売されたが、盛り上がりに欠ける現状を見ると、先行きが気がかりだ。

9月22日に発売されたiPhone 8とiPhone 8 Plus

初代iPhoneが発売されたのは、2007年6月。2007年度は半期分しか売上計上されなかったとはいえ、アップル全体に占めるiPhoneの売上比率はわずか1%でしかなかった。業績から見れば、当時はまだiPhoneは脇役的な存在だった。その後、劇的に販売数量、売上は増え、今や売上の6割をiPhoneに頼っている状況だ。アップルは本当にiPhoneの会社なのだ。

2017年は第3四半期までの数値(アップル決算資料をもとに編集部作成)

アップルにとって、iPhoneの売れ行きこそが最重要課題となる。そして、毎年、新しいiPhoneの発売日を迎えるたびに、販売店前には長い行列ができていた。

しかし、今年は様子が少し違う。アップル直営店の前の行列は最盛期に比べるとかなり短く、オンラインストアからも手に入りやすくなった。携帯キャリア代表のコメントを見ても、例年よりも販売数量は少ないと見たほうがよさそうだ。こうした状況は日本だけではない。米国、豪州など直営店前の行列が短くなったとされ、アップルの強さが伺えるニュースは見えないのが現状だ。

理由は大別して2つ。ひとつは11月3日に発売される「iPhone X待ち」とするものだ。確かにそうした側面はあろうが、気がかりなのはその価格。64GBモデルで112,800円と高い。日本では人気機種となったとしても、世界的に人気化し、アップルの業績に貢献できるかはわからない。

もうひとつは、革新性だ。カメラ性能の向上や見かけは大きく変わったものの、購買に結びつくほどの注目機能が少ないとの見方がある。これ自体はiPhoneに限ったことではなく、スマートフォン全体にいえることだ。購買に結びつける新機能は、どのメーカーも提供できていないように見える。

新iPhoneを巡って、現段階では断片的な情報からしか分析できず、最終的な評価は、iPhone Xの発売後しばらくしてからとなろう。その段階で注目すべきは、ハードウェアの魅力を訴えることがまだ有効か否かということである。

ジャーナリストの松村太郎氏が指摘するように、新iPhoneのハードウェア的価値は、ARや機械学習の活用・進化を受け止める最新プロセッサにあるのかもしれない。iPhone 8シリーズ、iPhone Xの売れ行き次第では、ハードウェアに注目すべき時代の終わりを決定付けるかもしれない。より一層、ソフトウェアに注目すべき時代がやってくる可能性もありそうだ。