世界のゲームコンテンツ市場は、8兆円を超えるといわれている。もちろん、その牽引役となっているのはスマホを中心にしたモバイルアプリだ。今後はVR/ARといったテクノロジーの普及により、ますますゲームコンテンツが勢いづく可能性は高い。
一方で、衰退が目立つ市場もある。そう、いわゆる「ゲームセンター」と呼ばれるアミューズメント施設だ。「インベーダー」や「ストリートファイター」、「電車でGO!」など、社会現象にまでなったコンテンツを輩出したが、今では当時の勢いはみられない。近年では、「太鼓の達人」が、ひとり気を吐いているといった状況だ。
そんな中、根強い人気で長く親しまれているのが、クレーンゲームとシール機だろう。特に前者は1960年代にはあったとされ、50年以上も続いているコンテンツ。それを考えると、クレーンゲームはまだまだ健在ともいえるが、安穏としてられない状況にもなってきた。 それはなぜかというと、ネットを利用したクレーンゲームが台頭してきたからだ。ピンとこないかも知れないが、イメージはこうだ。パソコンやスマホで画面を確認しながらクレーンを操り、景品をゲットしたら、それが後日に宅配便で送られてくる。わざわざゲームセンターに行かなくとも、クレーンゲームを楽しめるという寸法だ。革新的といえば革新的だが、ディープといえばディープなサービス、という印象を受ける。
このネットによるクレーンゲーム「ネットキャッチャー」を運営する、ネッチ 代表取締役社長 西村大氏に話をうかがった。
「ネットによるクレーンゲームの発想は、2003年頃にはすでにありました。ですが、当時は技術的な問題などで普及しませんでした。ですが、ここにきてネットのクレーンゲームが、にわかに注目され始めています。通信環境といったインフラが整備され、リアル動画を難なくユーザーに届けられるようになったからです」。
この“リアル動画”というのが、ポイントといえる。仮に2003年頃の環境でネットクレーンゲームを提供する場合、通信がプアなので“2次元”、つまりデジタル描画という手法が採られただろう。だが、デジタル描画では、運営者の意図により“インチキ”も行えてしまう。ユーザーからしても、景品をゲットした感覚が得にくい。
バーチャルと現実を通信でつなぐ
ところが、ネットキャッチャーで操るのは本物のクレーンゲーム。クレーンの動きや景品そのもの、あるいは景品の位置などはすべて現実で、それがリアル動画でパソコンやスマホに送られてくる。ゲームセンターのクレーンゲームと異なるのは、実際のボタンに触れてクレーンを動かすのか、それとも画面のインタフェースでクレーンを操作するのか。景品をその場で手にするのか、それとも後日に送られてくるのかということのみ。いや、付け加えるなら、ゲームセンターに行く際は外服に着替えなくてはならないが、ネットのクレーンゲームではパジャマのまま、フトンに潜り込んだ状態でもプレイできる。
そしてもう一点、“営業時間”という点でネットのクレーンゲームはアドバンテージがある。ゲームセンターは風営法により、深夜12時以降に営業できないが、ネットならばその縛りがない。
事実、西村氏は「夜間10時から翌2時ぐらいまでに利用が集中する傾向にあります」と話す。