「お茶市場を全体で見れば伸長している。麦茶やトクホ、機能性飲料は伸びているのに烏龍茶は下降傾向。コンビニのバイヤーからは『可能性はある』と言われている。烏龍茶の休眠ユーザーを掘り起こすことで、お茶全体をさらに引き上げていきたい」

こう語るのは、日本コカ・コーラ マーケティング本部 マーケティング・ザ・カテゴリー ディレクターの河井 一慶氏だ。休眠ユーザーの掘り起こしを狙った商品は「熟成烏龍茶 つむぎ」。つむぎといえば2015年3月に登場した製品だが、「日本の烏龍茶」から「熟成烏龍茶」と冠を付け替え出直す。その理由はなぜか。

日本コカ・コーラ マーケティング本部 マーケティング・ザ・カテゴリー ディレクターの河井 一慶氏

熟成烏龍茶 つむぎ

烏龍茶市場は減少トレンド

競合であり、市場の過半数を占めるとされる「サントリー烏龍茶」が圧倒的な烏龍茶市場。しかし、「お茶市場」として見た時、相対的なポジションは年々低下している。お茶市場はこの5年で400億円ほど伸び、2016年度には5000億円規模にまで拡大。一方の烏龍茶市場は、450億円から341億円とシュリンクしており「ピークは2002年。徐々に休眠ユーザーが増えている環境」(河井氏)。

烏龍茶は脂肪の吸収を抑える効果を持つとされるため、健康志向の人の間で親しまれてきたが、前述の通りトクホや機能性飲料などのさらに健康に良いとされるお茶に購買層の関心がシフト。また、「綾鷹などの緑茶が『本格的』を謳うことで、相対的に烏龍茶が大切にしていた本格派というイメージが薄れてきた」(河井氏)という。

そこで新製品は、熟成肉や熟成米、熟成スイーツといった"熟成"に着目。日本には茶道における「口切の茶事(さじ)」と呼ばれる作法があり、茶葉を寝かせることで味に深みを、香りに芳醇さを与える伝統があることから、これにヒントを得て烏龍茶の茶葉を180日間寝かせた。これにより香気成分「α-イオノン(フローラル・スミレ系の香り)」が増加し、烏龍茶でありながらも花のような香りが漂う飲料に仕上がった。これに加えて烏龍茶本来の深い味わいが引き出され「濃く、しっかりとした味に仕上がっている」(河井氏)。

実はこれまでの「つむぎ」は、"飲み替え"を頻繁に行うライトユーザーをターゲットに、「飲みやすさ」を大切にしていた。しかし、一度飲むには良くてもほかのジャンルのお茶と比較すれば烏龍茶である必要はない。さらに「日本の烏龍茶というフレーズも、『すごいですね』『安心感がある』という声はいただくけど、あくまで1回飲むためのポイントであって、繰り返し飲む理由にはならなかった」(河井氏)。