Apple Storeで実施されている無料の学習講座「Today at Apple」では、「How to:プログラミングを始めよう」と題されたセッションが用意されている。これはAppleが提供するプログラミング学習アプリ「Swift Playgrounds」を使って、プログラミング言語「Swift」の基礎が学べるというものだ。

「Today at Apple」のセッション「How to:プログラミングを始めよう」

iPadがあれば、特段、プログラミングの知識は必要ないとのことなので、筆者もこれなら楽しめそうだと思い、参加してみることに。

平日の昼間、銀座ということもあって、比較的高齢の方の参加が目立ったが、20代前半と思しき方もちらほら。Swift Playgroundsは、12歳以上のプログラミング初心者が楽しみながらインタラクティブに学べるというのを謳い文句としていることもあって、やはり参加者もさまざま、という感じだ。

12歳以上なら誰でも参加できる。小学生でも高学年なら大丈夫そう

参加に際してはiPadを持参しなくとも、ストアのほうがSwift Playgroundsがインストールされた貸し出し機を用意しているので、手ぶらでOK。参加者全員にiPad Proが渡されると、早速、セッションがスタート。

SwiftとSwift Playgroundsの簡単な紹介ののち、スタッフから「世の中で、プログラミングで動いてるものは何か、ちょっと考えてみてください」という質問が投げかけられる。我々の身の回りにあるものの多くは、プログラムが動いている。例えば、Apple 銀座のエレベーターもそうだ。Apple 銀座の右側のエレベーターは各階で止まるように、左側は1階から4階へ直通し、4階に着いたら各階で止まって降りてくるようにプログラミングされている。このイントロダクションは、コンピュータサイエンス教育週間に実施されているジュニア向けワークショップ「Hour of Code(コーディングの時間)」でも用いられていたが、プログラミングは身近なものであり、コードを書くことは皆に関係あると印象付けるのに良い役割を果たしていると思う。

店内の格子状の床を利用してプログラミングの概念を解説

プログラミングの概念について解説が続く。iPadに触って、最初に開いたのはSwift Playgroundsではなく「メモ」アプリだ。ここでスタッフは、自分をロボットに見立て、プログラムを書いて動かしてみて欲しいと呼びかけ、格子状になっているストアの床に付箋紙を置いた。そして、「メモ」アプリに、格子をどの方向に何歩動けば付箋紙を貼った位置に移動できるか書いてみて欲しいというお題を出した。

これがプログラミングの基礎となる。「右を向く」「前へ進む」といった指示を与えることで、コードが実行できるようになるのだ。Swift Playgroundsでは「moveForward()」で前進、「turnLeft()」で左を向くなどのコマンド(指示)を与えて、書いたコードを実行する。

キャラクターを選んでゲーム感覚で学習を進められるのがSwift Playgroundsの特徴

基礎が理解できたところで、いよいよSwift Playgroundsを使ってコードを書いていく。アプリにはさまざまなレッスンを追加してプログラミングを学んでいける。コマンドの出し方などを、設定されたキャラクターを動かしながらゲーム感覚で学習を進められるので飽きが来ない。

熱心に手書きのメモを取る参加者も。成果を持って帰るためにも、もし所有しているならiPadを持参するのをおススメ

このセッションは1時間と短めなので、本当にプログラミングの入り口に立つくらいまでしか案内されないのだけれど、一旦、扉を開けると、そこから先は無限の可能性が広がっている。Swift Playgrounds単体でiPhoneやMac用のアプリの開発はできないが、セッション終盤、スタッフからAppleが提供するMac用の統合開発環境「Xcode」が紹介された。XcodeにはiPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple TV向けのアプリを作成するために必要なすべての機能が用意されている。これを使えば、アプリの開発が行えるようになるのだが、Swift Playgroundsには、Xcodeへのダイレクトな書き出し機能が備わっているので、iPadで作成したコードをアプリ化することもできるのだ。

Appleが提供するMac用の統合開発環境「Xcode」も紹介

Xcodeを学びたいという向きには「Everyone Can Code」というページが用意されていて、ここには「Swiftによるアプリケーション開発:入門編」というiBooksコンテンツへリンクが張られており、そこからXcodeの使い方やアプリの開発に関する基本的な情報を入手することができる。

Xcodeを勉強したいという人のために「Everyone Can Code」のページも紹介された

筆者はこの「Everyone Can Code」というキャッチフレーズは、とてもAppleらしいなと感じるところがある。「一部の人のために製品を設計することはしない、たとえ、その一部が大多数だとしても」というステートメントにあらわれているよう、Swiftだって誰もが扱えるようになっている。誰でも自然言語を操れるように、プログラミング言語も皆が書けるようになるはずなのだ。

Appleの開発者会議「WWDC17」のキーノート冒頭、CEOのTim Cook氏は、最年少参加者のYuma Soeriantoくん(10歳)と、最年長参加者の若宮正子さん(82歳)を紹介した。マイナビニュースでは開催前、スカラシップ枠に選出された関西学院高等部の佐々木雄司さんのインタビューを掲載したが、彼女、彼らは性別、年齢、人種などに関係なくSwiftは扱え、プログラミングを書くことができるようになるという意味での象徴的な存在だ。

ところが、テック系のジャーナリストや媒体は、彼女、彼らを「すごい人」「天才」「スーパークリエイター」などと、崇め奉るようなことをしてしまった。閲覧数稼ぎのために小賢しくセンセーショナルな見出しをつけているなら理解できるが、そうでないとしたら、テック系の人々は、Appleが本当に伝えたいメッセージを読み取れていないのではと、訝しく思ってしまう。確かに彼女、彼らはユニークな存在ではあるかもしれないが、Appleは「特別」な人を招集したり紹介するということはしないはずだ。

また、もし「特別な人」だからプログラミングを書けるのだと言うのなら、文部科学省の新学習指導要領でプログラミング教育を「必修」とするのは相応しくないということにはならないだろうか。崇拝の対象としてプログラムを書ける人々を称揚する言説が幅を利かせるのは、正直、危機感を覚える。

では実際のところどうなのだろう? 特別な人でなくてもSwift Playgroundsは扱えるのか? 1時間のセッションで、非テック系、Swift初心者、FORTRANの単位落として大学でコンピューター周りの講義受けるのは諦めた筆者でも、これくらいまではできた。スクリーンショットをご覧頂きたい。このまま学習を進められれば、それなりのことができるようになるのではないかと思わせてくれるのが、Swift/Swift Playgroundsなのだ。

「How to:プログラミングを始めよう」は「Today at Apple」のセッションとして、国内のApple Store各店舗(Apple Watch at Isetan Shinjukuを除く)で実施されている。夏休みの大学生、中・高校生におススメなのはもちろん、小学生でも高学年ならチャレンジできると思う。Appleは対象年齢を12歳以上としているが、プログラミング学習を始めるにあたって、早すぎるということはない。

「Today at Apple」の情報はAppleのWebサイトやiOSの「Apple Store」アプリから入手できる。Webサイトからセッションを検索するには「プログラミング」のボタンから探せば、すぐに実施日時が見つかる。この夏は、Swiftプログラミングという大海に漕ぎ出してみてはいかがだろうか。