富士通のデスクトップPC生産拠点である富士通アイソテック(福島県伊達市)で、2017年夏の「パソコン組み立て教室」が開催された。
「パソコン組み立て教室」は同社が例年、子どもの社会学習機会やものづくり体験、地域貢献などを目的に開催している小中学生対象の取り組みだ。あわせて、Scratchを使ったプログラミング学習体験も同時開催された。
富士通アイソテックのPC組み立て教室は、2017年で14回目を迎える。2017年は小学生11名、中学生7名の計18名(男性14名、女性4名)が参加した。全員が福島県内からの参加となる。
今回組み立てるPCは、23型液晶一体型デスクトップPC「ESPRIMO WF1/B1」。四辺狭額縁のディスプレイと細い2本足スタンドが特徴で、スピーカーは底面に設置されている。
富士通アイソテック 代表取締役社長の岩渕敦氏は、「すごく楽しい教室なので、後悔させません。楽しんでいって欲しい」と開会にあわせ挨拶した |
23型液晶一体型デスクトップPC「ESPRIMO WF1/B1」。約2mmの狭額ベゼルと細身の2本足スタンドが特徴だ |
2017年の富士通アイソテック パソコン組み立て教室は、2016年に続き、実際の工場のPC製造ラインを使って行われた(組み立て教室は休日の開催だったためラインは稼働していない)。今回のPC組み立ての主な手順は下記の通り。
富士通アイソテック2017「パソコン組み立て教室」PC組み立ての主な手順 | |
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1. | マザーボードの取り付け |
2. | メモリの取り付け |
3. | 放熱板(ヒートシンク)の取り付け |
4. | ファンの取り付け |
5. | TVボードの取り付け |
6. | ケーブル接続 |
7. | DVDドライブの取り付け |
8. | HDDの取り付け |
9. | DVDドライブ、HDDのケーブル接続 |
10. | スタンドの取り付け |
11. | 外観確認 |
12. | 裏カバー取り付け |
13. | 裏カバーネジ締め |
14. | 本体を起こす |
15. | 完成 |
小学生と中学生では異なる組み立て内容が用意され、小学生では、上記の1および3~6の手順が省かれている(代わりに、必要なパーツを自分の棚へ運びこむピッキングの体験が加えられている)。小学生が使うネジの本数は23本、中学生は32本となり、2016年と比べると組み立て難易度が確実にアップしていた。
参加者には組み立て順を解説した小冊子が配られたほか、富士通アイソテックのスタッフが小学生には一人につき一人、中学生には二人につき一人サポートについた。
2016年のPC組立教室では、マザーボードやファンなどが既に取り付けられた状態だったが…… |
2017年のPC組み立て教室では、ディスプレイが組み付けられている以外は、ほぼまっさらな状態からスタートする |
それでは実際のPC組み立て工程を写真で見ていこう。
組み立ては富士通アイソテックで実際にPCを組み立てている製造ラインで行われた |
使う工具はドライバー2本。一般的な大きさのものと、精密用との2種類だ |
中学生向けの組み立てでは、必要なネジを最初に選んで持っていく |
最初に取り付けるのはマザーボード。ネジ7つを反時計回りに締め、本体に固定する |
次にメモリの取り付け。切り欠きを合わせ、奥まで差し込んだ後に倒す |
ヒートシンクの取り付け。通常、ヒートシンクの取り付けはCPUの上に熱を伝導させるグリスを付けるが、今回グリスは省かれている |
誰もいないラインで一人PCを組み立てる
スタッフの説明によると、通常の製造ラインで「ESPRIMO WF1/B1」を組み立てる工程を10とすると、今回の中学生向け組み立て体験は7程度という。
筆者も実際に組み立てに参加してみたのだが、今回、気がついたら自分以外の全員の組み立てが終了しているではないか。この時、筆者の進捗は6割程度といったところ。組み立て速度を競っていたわけではないが、ついに初めての「圧倒的最下位」を記録してしまった。これまで複数のPCメーカーで、PC組み立て体験を経験してきたが、記事用の写真を撮影するという作業を含めても、参加者の中で一番最後になることは一度もなかったのだが……。簡単すぎず難しすぎずの丁度いい難易度で、加えてスタッフの方々が丁寧に教えてくれたこともあり、多くの参加者が想定よりかなり早く終わったようだ(負け惜しみではない)。
早く組み立て終わった参加者は、記念にサポートスタッフと写真を撮ったり、電動ドライバーを触ったりするなど、普段見る機会の少ないであろう、PC組み立て工場の工場見学を楽しんでいた。ネジや基板、各種ケーブルなどに触れ、手を動かしてモノを組み立てる体験自体が、参加者にとっては新鮮な体験だったと思われる。
個人的な要望を付け加えるなら、参加した子ども達の多くは、PCの内部を見る機会がこれまで少なかったと思われるので、最初にPCの仕組みをかみくだいて説明したり、自分が取り付けるパーツ、ケーブルがどういう役割を持つのかを説明するような仕掛けがあっても良かったかもしれない。
Scratchを使ったプログラミング教室も2回目に
プログラミング体験は、2016年に続き、児童向けのScratch解説書「小学生からはじめるわくわくプログラミング2」(日経BP)を執筆した、ボランティア団体「OtOMO」代表の倉本大資氏が講師を務めた。
Scratchは、Webサイト上で動作する子ども向けのプログラミング学習環境。目的に応じたさまざまな要素(ブロック)が用意され、ドラッグ&ドロップの基本操作だけでスクリプトを組んでいくことができる。今回はScratchに登場するキャラクター、スプライトを自由に動かすプログラムを組むことで、基本的なプログラミングの考え方を紹介していた。
プログラミング体験の様子。「こうするとどうなると思う?」など、子ども達とやりとりしながら説明が進められた |
実際に試してみると、細かい命令をどう指定するのか、どう組み合わせるのかが難しい。トライ&エラーを繰り返してスプライトを動かしていく |
2020年の小学校プログラミング学習必修化に向け、教育現場では課題も多いという。今回のプログラミング教室に参加した伊達市教育委員会、国見町教育委員会の面々が課題として挙げたのが「環境の整備」「教員のスキル」の2点だ。プログラミングを学習させることで、子どもたちに何が伝えられるのか、指導内容をどう設定するのか。また、算数や理科と異なり正解のない分野でもあるので、プログラミングを教える教員側にも高いスキルが求められる。教員側のスキルを高めるためにプログラミングの研修を行うことも「検討はしている」とのことだが、「現状、教員の仕事量は逼迫している。とても新しい研修を入れられる状態ではない」とも語る。これに対し、岩渕社長は「富士通アイソテックを使った研修機会の提供など、サポートをしていきたい」とした。