パイロットを実施して「とにかく失敗」を

2つ目の論点「自社にAIベースの製品が適しているかどうかの見極め」について、ホーヴァス氏は「早期に失敗することが重要」と述べた。シリコンバレーではAIについて「とにかく失敗しろ」というのが合言葉らしい。

「早期に失敗する」には、製品を購入する前に、自社のデータとテスト用インフラストラクチャを使って、パイロット版(概念実証)を実行すればよい。具体的には、現在のスタッフとインフラストラクチャによって、「現在のプロセスを事前に定量化」「パイロット版の期待値を定量化」を行い、パイロット版を少なくとも30日間実行する。

「ミスをするのは当たり前のこと。ならば、評価中にミスをしたほうがよい」とホーヴァス氏。

AIのメリットを享受するために、組織をどう変更するか

3つ目の論点「AIのメリット実現に向けての組織の変更」については、AI製品に対するコミットメントの評価において、次の項目を検討する。

  • データ・サイエンティストを雇う必要があるか、あるいは現在のスタッフを活用できるか

  • データ・キュレーションにどのようなツールを利用でき、どの程度のトレーニングが必要か

  • 結果から正確性が失われた際、製品から不良データを特定および排除するのはどの程度困難か

  • 時間とともに結果の正確性が低下した場合、何をする必要があるか

加えて、ホーヴァス氏は、セキュリティ・プロセスに占めるAIの割合が大きく なったら、AIの評価と管理にリソースを割り当てて、持続可能にする必要があると説明した。

小さな組織であれば、コンサルタントを雇うか、開発者またはセキュリティ担当者を トレーニングする。 また、大規模な組織であれば、常勤採用を検討する。

最後に、ホーヴァス氏は同社からの提言として、セキュリティ/リスク・マネージャーのための行動計画を紹介した。

直ちに実行すべき事項は「AIプロジェクトを検討中の領域をレビュー」「コスト/メリットと既存の技術を対比させた上での評価」となる。

90日以内に実行すべき事項は「自社のデータを用いてパイロット版を実行」「5年以上継続するために必要となる変更項目を評価」となる。

1年以内に実行すべき事項は「メリットを維持するために人員を増やす」「技術の変化に合わせ、自分のアプローチを再評価」となる。

他の技術と同様にAIもまた導入にあたっては、その特徴を理解した上で、自社にとってどのようなメリットをもたらすのか、どのような体制で運用を行うのかを明らかにしておく必要があるようだ。AIのイメージに惑わされることなく、本質を見極めて、導入に踏み切りたいものである。