石渡: これを、いま風に言い替えたのが、PINT!です。PINT!は、「Plus Idea Next Technology」の頭文字で、新たなアイデアという「コト」を、次世代の技術という「モノ」で起こす、あるいは、「モノ」を通じて、「コト」を生み出すという意味を込めています。モノからコトは、東芝時代に使っていた言葉でしたし、新たなイメージを出すためには、言い替えたらどんな言葉がいいだろうかと考え、行き着いたのがこの言葉でした。ピンと来るという言葉とも連動させています。

--いまの東芝ライフスタイルの商品を見て、PINT!の達成率はどの程度ですか(笑)

石渡: これは永遠の課題だといえます。ただ、お客様に使っていただくなかで、ピンと思ってもらえるシーンが増えればいいと思っています。この夏に放映したテレビCMのなかで、「今日一日、あなたを、何回、ピンとさせることができただろうか」というメッセージが入っているのです。たとえば、電子レンジでピザを焼くということで、友達を招待してみたいと、ピンと思ってしまうというような、実生活のなかで、コトが起きることを支援するモノでありたいと考えています。PINT!は、東芝の白物家電事業の姿勢を示したものであり、少なくとも、2020年まではこの言葉は使い続けたいと思っています。

IoT家電に再びアプローチ

--PINT!を達成する上で重要な要素はなんですか。

石渡: これからはスマート家電の世界が本格的に訪れます。つまり、IoTが重要になり、これがコトづくりに直結することになります。マイディアでは、中国で、スマート冷蔵庫をすでに発売しており、100万台の出荷を目標にしています。それだけの冷蔵庫がコネクテッドすることになり、そこから出てきたデータを活用した新たなビジネスやサービスを提供できるようになります。すでに、冷蔵庫の稼働状況をもとにした故障予知のサービスを開始しており、壊れる前に修理するといったことを可能にしています。

実は、東芝時代には、スマート冷蔵庫を発売した経緯があり、ネットにつなげた利用ができます。しかし、ネットにつなげるときの手続きが複雑でした。これは、東芝グループという観点から、HEMSにつなげるという発想で商品を開発していますから、お客様自身もホームゲートウェイへの投資が必要になり、家のなかを工事しなくてはなりませんし、そこで数万円の費用が発生し、さらに月500円程度の使用料負担が必要になります。これではスマート家電を使ってみようと気にはなりません。

しかし、マイディアグループは、家電メーカーとしての発想でモノづくりをしますから、まずは、家のなかにあるWi-Fiにつなげばサービスが利用でき、スマホからも簡単に操作できるようにします。さらに、お客様には費用負担なしでサービスを利用してもらう環境も作ります。つまり、これまでのように、スマート冷蔵庫なので、余計にお金をくださいという発想はありません。収益は別のところから得るという仕組みになります。言い替えれば、東芝のスマート家電のビジネスは、新たな東芝ライフスタイルのなかで、一度リセットすることになります。第1世代のスマート家電が普及しなかったのは大いに反省すべきことではありますが、IoTがこれまで以上の速度で広がるなかで、スピード感をもって、走りながら考え、アプローチしていくつもりです。マイディアグループは、まずは、100万台の冷蔵庫がつながるという世界を作り上げ、そこから新たなビジネスを生んでいくという発想で取り組んでいます。日本においても、同じような発想で進めたいと考えています。

TOSHIBAブランドの新たなスマート家電は、2018年度には、日本市場に投入したいと考えています。これをTOSHIBAブランドのスマート家電の第2世代と位置づけて取り組んでいくことになります。ぜひ楽しみにしていてください。