高速性、利便性、安全性に加え、操作のしやすさも秀逸

この3つのニーズについて、少し詳しく見ていこう。(1)に関しては、先述の最大2,533Mbpsのスループットを実現するルータとしての基本性能の高さに加え、複数のデバイスのそれぞれが自動的に2.5GHz帯と5GHz帯のどちらか最適な帯域に接続して回線を維持する、スマートコネクト機能などが挙げられる。

また、QualcommのNSSエンジンを採用しており、Layer 4(L4) トランスポート層とLayer 7(L7)アプリケーション層をハードウェアでアクセラレーションできる。これにより、L4やL7のコントロールを追加しても通信速度を維持する。

L4/L7のハードウェアアクセラレーションに対応

さらに、個人ユーザーというよりは、SOHOなど向けの機能となるが、WANポートを2基搭載しており、1つの回線に障害があった場合、即座にもう1つの回線へつなぐ自動フェイルオーバーにも対応する。

RT2600acの背面。アンテナを外したところ。2つのWAN入力を持つ

(2)については、ランサムウェアなどのマルウェアの蔓延や不正アクセスが念頭にあるわけだが、高度なトラフィック解析が可能なInstrusion Detection Systemによる悪意あるパケットの侵入検知と通知や、Intrusion Prevention Systemによる侵入防止に対応する。

悪意あるパケットの侵入検知と侵入防止に対応

また、2016年末にシリースした、VPNアプリケーションの「VPN Plus」が提供され、これをRT2600acで活用できる。同社が従来提供してきた「VPN Server」の機能を拡張したもので、VPNのセキュリティを向上し、利便性もアップする。VPN Serverでサポートしていた、PPTP、L2TP over IPsec、OpenVPNといったプロトコルに加え、VPN PlusではSSTP、WebVPN、Synology SSL VPN、管理機能にも対応する。

VPNアプリケーションの「VPN Plus」を提供。独自VPNをはじめ、様々なプロトコルに対応する

独自となるSynology SSL VPNは、高いセキュリティを維持しながら、高いスループットも実現し、設定も容易に行えるよう工夫されているという。具体的にはデバイス単位やアプリケーション単位のトラフィック制御が可能になるため、例えば社内でSMBのファイル転送用には大きな帯域を確保し、SNSや動画サイトなどの帯域を小さく設定するといったポリシーが適用できる。

なお、SSTP、WebVPN、Synology SSL VPNは1アカウントは無料で利用できるが、2アカウント以上の同時接続は別途ライセンスが必要となる。2アカウント以上のライセンス料金は、9.99ドルで提供されており、SRM上からクレジットカードなどで購入できる。

RT2600acでは、ペアレンタルコントロールにも対応する。ペアレンタルコントロール自体は多くの製品で導入されている機能だが、RT2600acではネットワーク単位に加え、デバイス単位でも設定できるのが特長だ。子供の利用するデバイスにだけ、アクセス制限を掛けたり、インターネットの接続を許可する時間を設定するといったことが可能になっている。

SRMの管理画面。ペアレンタルコントロールで、指定したMACアドレスに対して利用可能な時間帯の編集を行っているところ

最後の(3)は、ユーザーインタフェースの見やすさ、使いやすさが中心となる。先述した独自OS(管理ツール)のSRMは、QuickConnect IDを登録するだけで、ブラウザベースで簡単にアクセスでき、どんな機能をどう設定すれば、期待通りのカスタマイズが可能か直感的に理解しやすい。

画面上で使われている専門用語は、マウスオーバーすると用語解説がポップアップするといった工夫も凝らされており、中級者クラスの知識があれば十分使いこなせるのではないかと感じる。

また、利便性を向上する機能としては、Cloud Station Suiteにも触れておきたい。RT2600acには外部ストレージとして外付けHDDなどが接続できると先述したが、Cloud Station Suiteを利用すれば、インターネット内外でPCのフォルダと外付けHDDのフォルダを同期できる。イメージとしては、DropBoxの機能を自前で用意できる状態に近そうだ。

Cloud Station Suiteを利用すると、自宅の外付けHDDのフォルダと外部のPCのフォルダを同期できる

SRMの管理画面。ペアレンタルコントロールで、指定したMACアドレスに対して利用可能な時間帯の編集を行っているところ

プレミアム無線LANルータ市場の盛り上がりに期待

Synologyでは、RT2600acをルータを扱い慣れた熟練PCユーザーや、ゲームユーザー、SOHOユーザーなどにアピールしていくという。取扱説明書はPDFで用意しているが、パッケージには折りたたまれたクイックスタートガイドのみの同梱となっており、SSIDが何を指すか分からないような初心者には少々難しいはずだ。

とはいえ、スペックを見る限りでは、プレミアム無線LANルータを名乗るだけの機能・性能はきっちり盛り込まれており、国内ルータ市場で高付加価値を売りにするプレミアムゾーンが伸びていく可能性も感じさせる。そうなっていけば、初心者でも手を出しやすくなるような"仕掛け"や"フォロー"は、自ずと起ち上がってくるだろう。

実機はアンテナを含まないサイズが、W280×D169×H77mmと決して小さくはない。壁掛けは可能だが(専用アタッチメントの提供時期は未定)、縦置きは基本的には対応しない。

実機を実際に見てみたい場合、秋葉原のPCショップなどを中心に、カメラ系量販店や一部家電量販店の自作コーナーで展開するとのことなので、店頭で確かめると良い。もちろん、購入はウェブ通販などでも可能だ。