アクロニスジャパンは6月28日、都内で記者会見を開き、ランサムウェアなどに対応したデータ保護ソリューション「Acronis Backup」「Acronis Backup Advanced」を統合した新バージョン「Acronis Backup 12.5」を発表した。

「Acronis Backup 12.5」の概要

同社では、従来のAcronis BackupとAcronis Backup Advancedを「Standard」「Advanced」の2つのエディションに名称を変更し、Acronis Backup 12.5はStandardとAdvancedともに同一のプログラムを使用するため、各エディションのライセンスキーを登録するだけで各機能が利用可能になる。これにより、5~50人規模かつ1~5台のサーバを想定した導入しやすいAcronis Backup 12.5 Standardから、本格的な導入を想定したAcronis Backup 12.5 Advancedへの移行も、ライセンスキーの追加だけで行えるという。

新製品の説明を行ったアクロニス・ジャパン セールスエンジニア マネージャーの佐藤匡史氏は、企業のIT活用の現状について「68%がハイブリッド環境を利用し、80%がクラウドでデータを消失しているほか、2016年には47%がランサムウェアに感染している。バックアップには広範囲、高速、柔軟、直感的、革新的な要素が求められている」と指摘した。

アクロニス・ジャパン セールスエンジニア マネージャーの佐藤匡史氏

そのような現状を踏まえ「新製品では、企業のIT環境全体のバックアップ・復元を1つの画面で管理し、高速復元でRTO(Recovery Time Objective)を短縮している。また、あらゆる場面を想定したデータ保護の選択肢を有しており、直感的な操作でバックアップ管理以外の業務時間を確保することに加え、革新的なテクノロジーにより未知の脅威からデータを保護することが可能だ」と、同氏は新製品のメリットをアピールした。

ブロックチェーンを活用した新機能など10機能

新製品の主な新機能と強化機能に、ダッシュボード、アドバンスドレポート機能、管理者ロール、SANストレージのスナップショット、Oracle Databaseのバックアップ、ベアメタル復元の自動化、バックアップからの起動/判定の自動化、オフホスト処理、Acronis Active Protection、Acronis Notaryの10点があるが、ユーザーからの要望が多かった部分を重点的にカバーしたという。

佐藤氏は、Oracle Databaseへの対応とAcronis Active Protection、Acronis Notaryの3つの重要性を強調した。

Oracle Databaseへの対応に関して、佐藤氏は「ユーザーのニーズが非常に強かった機能であり、これまでもスクリプトを使うことでOracle Databaseのバックアップに対応していたが、今回、専用エージェントをリリースした。これにより、データベース、テーブルスペース、ログ単位と包括的な復元をサポートしている」と説明。

Oracle Databaseのバックアップ機能強化の概要

Acronis Active Protectionについては「ランサムウェアからの攻撃を防ぐ、われわれ独自の新しい機能となる。ランサムウェアの振る舞いを検知し、ファイルの暗号化を防ぐほか、暗号化された場合は復元を可能としている。さらに、たとえセキュリティソリューションを使い、ランサムウェアを防いだとしても、バックアップを守れるかどうかが重要な要素となるため、われわれの自己防衛機能でエージェントに対する攻撃を遮断する」という。

Acronis Active Protectionの概要

Acronis Active Protectionの仕組み

そして、Acronis Notaryは「ブロックチェーンの技術を活用した非改ざん性を保証する機能となる。ブロックチェーンは、技術的に改ざんされていないことを証明することが可能であることから、データ保護に活用した。ファイルをバックアップする際に、自動でソフトウェアがファイルに対してNotaryを添付し、ファイルのハッシュがブロックチェーンの中に取り込まれて、改ざんできない状態で保存される」と、同氏は語る。

Acronis Notaryの概要

Acronis Notaryの仕組み

そのほか、ダッシュボードについては関連する情報をグラフィカルにリアルタイムで動的に表示し、運用に役立つ情報はウィジェットとして用意することで自由に配置可能なほか、パラメータの変更にも対応している。

アドバンスドレポート機能は、データ保護運用に必要なレポートはテンプレートとして用意。レポートのカスタマイズも可能なことに加え、PDF、エクセル、CSVにより出力でき、出力されたファイルはメールで送信または指定した場所に保存する。

加えて、管理者ロールは部署やグループごとに管理者を作成し、管理権限を委譲することが可能。管理者は管理サーバにログインして自身の権限内で作業が可能であり、他部署・グループから独立した管理を行える。SANストレージのスナップショットはバックアップ時のハイパーバイザー、仮想マシンの負荷を低減し、VMwareのスナップショット存続時間を削減できるという。

さらに、ベアメタル復元の自動化はリカバリメディアで起動されたマシンを管理サーバに登録し、管理することが可能なほか、起動用のメディア作成時に各種設定ができる。バックアップからの起動/判定の自動化はスケジュールに従って、バックアップアーカイブから仮想マシンを直接起動し、自動でOSを起動することで軌道確認を行い、結果を記録・通知することを可能としている。

オフホスト処理は、業務用マシンにおけるバックアップ作成以外の処理を別の環境で代替することに加え、ベリファイ、レプリケーション、クリーンアップ、カタログ作成、バックアップファイルの仮想マシンの交換ができるという。

「Acronis Backup 12.5」のエディション機能比較表

バックアップベンダーからデータ保護ソリューションを提供するベンダーへ

アクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏は「新製品を発表したことで、すべての製品がクラウドレディとなり、われわれはバックアップベンダーからデータ保護ソリューションを提供するベンダーとして、これからは大手を振って言えるベンダーになった」と、力を込めた。

アクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏

同氏は、クラウドバックアップの必要性に関して「従来の障害や災害の脅威に加え、ランサムウェアなどの標的型攻撃をはじめとした新たな脅威、ハイブリッド環境、マルチクラウドといった、すべてのITの一元管理が求められている。新製品は、ランサムウェア対策、非改ざん性の担保、ユーザーニーズへの対応をカバーしている。ランサムウェア対策はAcronis Active Protectionで、非改ざん性の担保はAcronis Notaryで、ユーザーニーズへの対応はOracle Databaseのバックアップで実現している」とした。

なお、ライセンスは永続(買い切り、1年間の保守付き)とサブスクリプション(1年/2年/3年版、サブスクリプション期間中サポートを提供)を用意し、従来の21ライセンスから9ライセンスに集約した。価格は下表の通り。

ライセンス価格表