「液晶は、新たな技術を研究開発しないと撤退につながる。また、亀山工場の液晶生産設備は、世界で一番古い設備であり、これを更新しなくてはいけない。シャープの液晶事業は全売上高の約40%を占める。これをやめると、もっと赤字になる。だが、がんばれば、新たな商品を作り、原価率も改善できる」と語る一方、「有機ELの試作は行っている。シャープは、日本の有機ELパネルで、テレビを出したいと考えている」などと述べた。
有機ELテレビに関しては、シャープ ディスプレイデバイスカンパニーの伴厚志副社長が回答したが、「シャープは、有機ELの開発は1992年からスタートしており、韓国勢よりも長い歴史がある。これまでは、事業化に向けた投資をしてこなかったが、まずは、スマホ、ノートPC向けに技術を立ち上げ、これと並行してテレビ向け有機ELパネルにも取り組んでいく。日本の技術を結集して、有機ELテレビを開発したい」と製品化に意欲をみせた。
だが、その一方で、有機ELテレビは、シャープにとっては、主力ではないことも強調した点も見逃せない。
「シャープは、液晶からスタートした会社であり、様々な技術やノウハウを持っている。これからも、液晶テレビの新商品を、ずっと開発していく」としながら、「スマホに採用されている有機ELパネルは、1年後には日焼けして、変色し、見づらくなってしまう。テレビは1年や2年で買い換える商品ではない。いまの有機ELテレビは、10年、20年という長い期間の利用を保証できるのか。4K液晶テレビは、明るさ、消費電力、コスト、長期信頼性、薄型化などにおいて、4K有機ELテレビを上回る。液晶事業は、シャープの全社売上高の42%を占めており、実力がある事業。チャンスを逃さず、さらに大きな事業に発展させていく」と述べた。
会場には、4K有機ELテレビと4K液晶テレビを比較したパネルをあらかじめ用意して説明。液晶テレビの優位性を示したほか、実機による比較も行い、液晶テレビの優位性を示していた。
IoT家電から食品販売?
また、「新規事業の加速」という点では、株主総会で決議した定款変更および追加に盛り込まれた「食品販売および金融商品の取り扱い」という観点から、シャープの野村勝明副社長が触れてみせた。
「食品販売を追加したのは、IoTが進化するなかで、冷蔵庫のなかに何があり、何が切れているのか、いまある食材から何が作れるのか、といったサービスを提供するなかで、食材などを補充するといった事業ができると考えているため。また、社内ベンチャーであるTEKION LABでは、ワインや日本酒などを最適な温度で管理できる製品を開発しており、これを利用した食材の宅配ビジネスにも応用できると考えている」とする。
「人に寄り添うIoT企業」への転換を目指すシャープが、それに伴って新たな事業へと進出。それに向けた定款変更を盛り込んだというわけだ。
このように、昨年の株主総会に比べると、今年の株主総会の雰囲気は180度変わったといってもいい。そして、鴻海傘下での再生が、ここまで早い段階で、成果につながるとは考えていなかった株主も多かったはずだ。質疑応答のなかでは、社員にインタビューしたという株主から、鴻海傘下での回復によって、社員が喜んでいることも報告された。
果たして、この成果が持続的なものになるのか。その点で、有言実行を掲げる戴社長への期待は高い。最終黒字化を掲げ、次のステップへと歩み出したことを宣言した株主総会であったといえる。