IT専門調査会社IDC Japanは、国内第3のプラットフォーム市場における2017年から2021年の産業分野別および企業規模別の予測を発表した。第3のプラットフォームとは、IDCが提唱する、ICTを支えるモバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4要素で構成された新しい情報基盤のことだ。同社は、2017年の国内第3のプラットフォーム市場規模(支出額ベース)は13兆2,126億円、前年比成長率は6.1%を見込んでいる。

また、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は4.3%、2021年の同市場規模は15兆3,460億円と予測する。企業分野のCAGRが7.4%、公的分野のCAGRは6.7%であり、同0.3%で横ばいの消費者市場を除き、いずれの産業分野も堅調に拡大を続ける。ただ、前年比で二桁増になる産業分野はなく、2017年以降、国内第3のプラットフォーム市場は安定した成長期に入るとみている。

国内第3のプラットフォーム市場 支出額予測、2016年~2021年 (出典:IDC Japan)

産業分野別では、金融、製造、小売、運輸・運輸サービス、公共・公益分野、官公庁が、高い前年比成長率で推移すると予測している。金融分野では、リスク管理・顧客サポートの領域でのコグニティブ・AIシステムの活用が進むほか、「FinTech」のサービス化フェーズへの移行、製造業のIoT技術の実装といった、第3のプラットフォーム技術を相互的に活用するユースケースが市場を牽引する。

国内企業が直面する労働人口不足という喫緊の課題がドライバーとなり、ITの利活用が進む。特に小売、運輸・運輸サービス分野では、「オムニチャネル」「インバウンド需要」と併せて、第3のプラットフォーム投資の促進要因となり、モビリティ、ソーシャル技術のほか、ロボティクスやAR・VR、コグニティブ・Iシステムといったイノベーションアクセラレーターの、業務支援を目的とした導入が進むと見込んでいる。

公共・公益においては、電力およびガスの小売自由化、設置が進むスマートメーターなどが投資を促進し、官公庁においては、東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、防災、渋滞緩和などを目的にした社会インフラ関連整備への支出が見込まれる。

企業規模別の第3のプラットフォーム市場は、従業員規模1,000人以上の大企業のCAGRが8.5%と最も高く、大企業が投資を牽引する。ただし、ソーシャル技術やクラウドを中心に、一部の小企業、小規模企業においてその価値を見出し積極的に導入している例が見られる。第3のプラットフォームテクノロジー市場のサプライヤーが、個人事業主やSMB(Small and Medium Business:中堅中小企業)向けに無料または価格を抑えたソリューションを展開していることもその背景にあるとみている。

一方、ビッグデータ・アナリティクス市場は大手企業や一部の中堅企業を中心に導入が進み、産業分野ごとに多様なユースケースが生まれている。IDC Japan ITスペンディンググループのシニアマーケットアナリストの岩本 直子氏は「今後、実証実験後の実装フェーズをいかに推進していけるかが、国内の第3のプラットフォーム市場のさらなる拡大の鍵となる。ユーザー企業のステークホルダーを巻き込みプロジェクトを推進できるITサプライヤーが、本市場の競争優位を獲得する」と分析している。

今回の発表はIDCが発行したレポート「国内第3のプラットフォーム市場 産業分野別 企業規模別予測、2017年~2021年(JPJ41777117)にその詳細が報告されている。レポートでは、国内の産業分野を21種類、企業規模を5種類に分類し、各分野の第3のプラットフォーム支出規模について、2017年~2021年の予測を行っている。