NTT西日本は5月31日、IoT分野におけるビジネスパートナーのサービス提供の支援に向けて、SD-WAN技術とエッジコンピューティング技術を組み合わせた新たなプラットフォームの実証実験を、2017年6月から2018年3月までの予定で開始すると発表した。

新プラットフォームのコンセプト

初回の実証実験(第1弾ユースケース)においてJIG-SAWと協業し、Peach Aviation(Peach)のカメラ・システムによる空港内の遠隔監視をユースケースとして、有用性を検証する。

具体的には、Peach事務所の近隣にあるNTT西日本通信ビル内にクラウド基盤を設置し、Peach事務所とデータセンターを仮想ネットワークで接続する。Peachターミナル事務所に高精細カメラ、NTT西日本通信ビル内の映像管理ソフトウェアを搭載したクラウド基盤、データセンター(パブリッククラウド)に映像を記録するためのストレージを配備し、空港内の遠隔監視を行う。

検証項目は、エッジコンピューティングの有効性確認(遅延、トラヒックの削減効果)および、SD-WAN技術によるネットワーク環境構築簡素化の有用性確認の2点。

実証実験のシステム構成イメージ

ビジネスパートナーの拠点とクラウド基盤をSD-WAN技術を用いた仮想ネットワークで接続するプラットフォームの実現を目指すとともに、ビジネスパートナーはSD-WAN技術の特徴であるCPE(Customer Premises Equipment、顧客拠点などの通信端末)の一元管理機能により、IoTデバイスがセキュアにクラウド基盤に接続可能な環境を構築できるという。

同プラットフォームの利用シーンとして、スポーツの試合映像をパブリックビューイング会場へライブ配信する場合を挙げている。

従来は現地映像を遠方にあるパブリッククラウドへ伝送し、パブリッククラウドで処理した後にパブリックビューイング会場へ伝送していたため、映像の遅延が発生する場合があったという。同プラットフォームを用いると、現地映像を近隣のクラウド基盤上で処理し、パブリックビューイング会場へ低遅延で伝送できる可能性がある。

実験の特徴は「データセンター(パブリッククラウド)へのトラフィック削減と映像監視端末への遅延の低減」「セキュリティの確保」「ネットワーク環境構築の簡素化」の3点となる。

データセンターへのトラフィック削減と映像監視端末への遅延の低減に関しては、ユーザー拠点近くに存在するNTT西日本の通信ビルのクラウド基盤でカメラ映像を処理することで、パブリッククラウドへのトラフィックの削減および映像監視端末への遅延の低減が可能となり、システム全体のレスポンス向上が図れるという。

セキュリティの確保については、フレッツ網に閉じたネットワークでインターネットを経由しないため、安定かつセキュアな通信を期待できるとしている。

ネットワーク環境構築の簡素化に関しては、SD-WAN技術を用いることでCPEの設定作業を簡素化し、迅速な仮想ネットワークの構築が可能になるという。

実証実験の特徴

各社の狙いについて、NTT西日本は同プラットフォームの有用性確認および多様な顧客ニーズに応える新たな利用シーンの創出、JIG-SAWは同プラットフォームを用いた新たなサービスの創出とクラウド基盤、およびIoTデバイスの自動監視・制御サービスの検証、Peachは同プラットフォームを利用した遠隔監視システムの利便性と機密性の検証および、同プラットフォームを用いたそのほかシステム(データ管理システムなど)利用の可能性の検証となる。