--オンプレミスからクラウドに移行したことで、グループ内ではどのような変化があったか?--

McDowell氏: 財務の仕事は変化しており、何があったか(過去)だけでなく、予測が必要とされる。そのため、一部の社員のスキルセットを変える必要があると実感している。

そこで、社内で2つのことを進めた。具体的には、財務部門の既存スタッフのスキルや能力を確認し、新たに財務部門で人を採用する場合、採用担当と密に協業して、必要なスキルを持つ人を雇用するようにした。

これらに加え、Oracle Academy(Oracleの教育事業)をグローバルビジネスファイナンス内に持ち込んだ。まずは、Oracle Talent Management Cloudチームの協力を得て、従業員向けの自己評価ツールを設計した。自分の強さ、弱みを理解してもらうのが目的だ。具体的なプログラムの設計では3つの柱を持たせた。3つの柱とは、新たな従業員、財務アナリスト、シニアだ。

米Oracle ファイナンス&ビジネスオペレーション担当バイスプレジデント Cheryl McDowell氏

新たに勤務する人に対しては、財務でどんな知識が必要かなどの基本的なことに加えて、ExcelのスキルやOracleのビジネスがどのように運営されるかを理解してもらう。

財務アナリストは新たに勤務する人の次のレベルとなり、財務上の指標をきちんと理解し、将来の見通しを立てられるようになるのがゴールだ。

シニアは経験を積んだ社員が対象で、ビジネスパートナーとしての役割を果たせることを目指す。ビジネス側の幹部とコラボレーションしたり、洞察を含んだプレゼンができたり、投資家との関係を理解したりといったスキルを求めている。

社員はこの3つの柱をステップアップしていく形で、継続的に受講していく。

Oracle Academyとの教育プログラムを通じて、求められているスキルは大学で1週間のコースを受講して得られるという類のものではないことがわかった。Oracleが求めているものに合わせたプログラムを作る必要があったのだ。

人材は重要だ。誰かを雇用する時、こんなスキルを持つ人が欲しいと指示を出すが、求めるスキルセットが昔とは異なる。これまでは会計に経験がある人を雇用していたが、現在は投資銀行に勤務経験がある、データの視覚化やデータ分析ができるといった人が欲しい。もちろん、基本的な会計のスキルが必要な部署もあるが、私の部署ではそれだけでは不十分だ。

--日本の財務部門にアドバイスをいただきたい--

McDowell氏: 今、デジタル革命が起きており、世界は目まぐるしいスピードで動いている。デジタル化を受け入れない企業は、生き残りが難しくなるだろう。

そうした中で重要なことは、デジタル化などの変化を脅威として見るのではなく好意的に見ることだ。方法はいろいろある。ビッグバンのアプローチでもいいし、われわれのようなハイブリッドなアプローチでもいい。さまざまな方法があり、柔軟に進めることができる。自社の状況を踏まえ、適したアプローチを選択していただきたい。