「2017 Japan IT Week春」のなかで数々のIoTに関する展示が行われていたが、今回ピックアップした富士通クラウドテクノロジーズで公開されていた数々のソリューションは筆者の興味を惹いた。

ニフティIoTデザインセンターのイメージカラーで統一された富士通クラウドテクノロジーズブース

2017年4月1日にニフティ株式会社がクラウド事業会社とコンシューマ事業会社に分社し、「これからの社会に求められるクラウド」や「デジタル社会のつながるサービス」実現し続けるために誕生した富士通クラウドテクノロジーズ。ブースでは、「とにかくIoTでサービスを創造したい」のような“イメージをカタチへ”のお手伝いから、「IoTを用いて顧客満足度の向上及び業務効率化に取り組みたい」といった“経営課題の解決”まで、あらゆるレベルでのIoT活用が提案されていた。

来場者のIoTに対する興味の高さを如実に示したかのように、IoTに関してワンストップで相談できるニフティIoTデザインセンターコーナーには数多くの人々が訪れ、説明員と熱心に話し込む姿が見受けられた

同社が取り組む事業の一角を担うニフティIoTデザインセンターのコーナーでは、「来店促進をしたい」「顧客接点を強化したい」「人員配置を最適化したい」といった事業課題を、IoTを駆使して包括的に支援してくれる。しかも、イメージ的には協業に近い形で課題解決に一緒に取り組んでくれるのだ。説明員の方の話によれば「お客様とともに課題解決に取り組む。協業といっても差し支えない形で我々も取り組みます」とのことだ。

一気通貫でIoTに関するさまざまな事柄を相談できるのは大きな強み。IoTコンサルティング、と銘打たれているが、従来のコンサルに抱くイメージとは異なり、ともに歩む協業に近い形で寄り添ってくれるというのも魅力に映るのではないだろうか

そうしたニフティIoTデザインセンターの取り組みから、オムロン株式会社とのコラボレーションによって誕生した「IoTトライアルキット」が展示されていた。センシングデバイスに強みを持つオムロンとクラウドやIoTに強みを持つ両社。「安く・早く・低リスクでIoTをカタチに」というキャッチコピーが現しているように、環境センサーアプリ・環境センサー10台・ニフティクラウドmobile backendのパッケージが初期費用198,000円(税抜)、月額料金もExpertプラン30,000円(税抜)から、Basicプランに至っては無料で利用することが可能だ。まず何かをIoTではじめてみたいという場合には、心強いキットだ。

オムロンとのコラボレーションで生まれた「IoTトライアルキット」も、商品企画事例のひとつとして例示されていた

こちらが環境センサーの実物。湿度・温度・照度・気圧・音・UVのデータを収集することが可能となっている

IoTトライアルキットに興味を持たれた方は、製品情報Webサイトより詳細をチェックしてみてはいかがだろうか

この「IoTトライアルキット」を活用して、例えば工場内に設置しファクトリーオートメーション実現のための調査を行う、センシング技術を用いて生活リズムの変化を捉え個人に合わせた睡眠アドバイスサービスを行う、といったようにユーザーの持つ強みを活かし“安価でスピーディーにIoTをカタチに”することが可能になるのだ。

また、先日報道発表のあった、富士通クラウドテクノロジーズとスポーツクラブ「ルネサンス」で行われているIoTを用いたスタッフ配置最適化の実証実験に関する展示も行われていた。この実証実験では、店舗スタッフに携帯させたビーコンから位置情報を取得し、各スタッフの行動を可視化。そのデータを参考に「受付業務に自信がある」「細かな書類整理が得意」といった各スタッフの個性やスキルを考慮しながら配置を最適化するというものだ。もちろん、最適化前後のサービス継続率(ここではスポーツクラブ会員継続等)を比較することで、密なコミュニケーションが顧客エンゲージメントにどの程度影響したのかを検証していく。

実証実験は2017年3月より行われているとのことだが、実際に説明員の方に話を伺ったところ「マネージャーが肌感覚としてぼんやり理解していたスタッフの動きが、IoTを用いて視覚化されはっきりと認識できるようになったことにまずはお喜びいただいている」とのこと。また、得られたさまざまなデータより行った最適なスタッフ配置により、顧客エンゲージメントも上昇しているということで、IoTが経営課題を実際に解決する事例のひとつとしても注目される。

スポーツクラブ「ルネサンス」で行われている実証実験、IoTで顧客エンゲージメント向上を狙うという取り組みの解説ボード。IoTという言葉だけが先行している感があるなか、実際に経営課題解決に結びつくソリューションには、やはり注目が集まっていた

スタッフが携帯したビーコンから収集した情報を可視化・分析。そして今後の改善案に活かしていく。余談だが、ビーコンの情報集積には昨今話題のRaspberryPiも利活用されているとのこと