シャープは4月12日、70型8K映像モニター「LV-70002」を発表した。LV-70002は、8K(スーパーハイビジョン)規格に準拠し、業界で初めてとなる8K解像度でのHDR規格(HLG・PQ方式)に対応。6月30日の発売予定だが、受注生産のみ。価格はオープン、推定市場価格は800万円前後(税別)となる。ここでは発表会の様子と実機を紹介しよう。
メディア向け発表会で説明に立ったのは、テレビ事業を率いる喜多村氏だ。
冒頭、政府が4Kや8Kの放送を強力に推し進めていること、BSや110度CSによる4K・8K実用放送などが2018年12月から始まることなどを整理した。「シャープとしては2018年12月を一つの焦点と考える。この放送が始まる前に、エンドユーザー向けの8Kラインナップをそろえておくことが、テレビメーカーとしての務めだ」と決意を語った。
シャープが8Kモニターを投入するのは、今回が初めてではない。85型のIGZO液晶を採用した8Kモニター「LV-85001」を2015年3月から発売している。こちらもB2B向けの受注生産のみで、実売価格は1,600万円だった。予想よりは売れたそうだが、家が建つほどの金額でテレビを買う一般消費者は。そうそういないはずだ。
今回投入するLV-70002は、LV-85001よりもサイズダウンし、IGZOの採用を見送っているとはいえ、価格を半分にまで落とした。シャープは年間で200~300台の販売を見込むが、まだまだ自動車は余裕で買える金額であり、「エンドユーザー向け」に届けるには桁を一つ下げたいところだ。
コンシューマー市場において、8Kの高画質映像がどの程度必要とされるか……という懸念もある。この点について喜多村氏は、「フルHDや4Kも登場当初は、家庭でこんなに高画質な映像が求められるのかと言われたが、現在は4Kの販売構成比が台数ベースで35%、金額ベースで70%を占め、既に主流になっている。8Kも必ず受け入れられる」と断言する。
そんな環境の中、2018年12月まであと1年半と迫ったところで投入となったLV-70002は、法人市場向けの製品とはいえ、コンシューマー市場をより意識したモデルとなっている。
LV-70002には自社開発の液晶パネルを採用し、直下型LEDを搭載。7,680×4,320画素、視野角は上下左右とも176°、最大輝度は1,000cd/平方メートルを実現し、新たにHDR規格にも対応。BT.2020比で79%という広色域への対応とメガコントラスト技術により、よりリアルで自然な映像を体験できる。
8K用の入力端子としては、HDMI×4を使う。また、これとは別に8Kに対応しない4つのHDMI端子を備え、合わせて8つのHDMI入力を搭載。スピーカーはフルレンジ×2、サブウーファー×1となる。
LV-70002の本体サイズはW1,564×D92×H910mm、重量は42.5kg、消費電力は470W。従来のLV-85001はW1,930×173×1,115mm、重量は100kg、消費電力は1440Wとなっていた(いずれもスタンド含まず)。LV-85001は、イベント会場などでの利用を検討する中で、重くて取り回せない、電源を確保できないなどの問題が指摘され、小型化・軽量化・低消費電力化が強く望まれていたという。喜多村氏は「通常の4Kと変わらない大きさの8Kを実現できた」と述べる。
だが、モニター本体の大きさは4K製品と同程度でも、地上/BS/110度CSデジタルチューナーは内蔵しているが、4K/8K用のチューナーは内蔵していない(LV-85001と同様だ)。LV-85001やLV-70002を「液晶テレビ」と呼ばず、8K液晶モニターと呼ぶ理由だろう。また、放送受信用途以外にも、医療用途、映像編集/デザイン用途、サイネージ/美術品のデジタルアーカイブ用途などを想定しており、そちらでの引き合いも意識して「モニター」としている側面もあるようだ。
今回、LV-70002の発売より少し早い4月14日に、8K/4K用の試験放送受信機「TU-SH1050」も法人向けとして投入する。こちらの推定市場価格は700万円(税別)前後だ。
TU-SH1050は、映像出力端子として8K HDMI出力を4端子、デジタル音声出力端子としてHDMI出力を3端子、アナログ音声出力端子としてL/R(2RCA)を1系統、LAN端子(10BASE-T/100BASE-TX)を1端子備える。4Kテレビと接続する場合はHDMIケーブル1本、8Kモニターと接続する場合はHDMIケーブル4本を使用するわけだ。
本体サイズはW435×D617×H170mm(突起部含まず)で、重量は約13.5kg、消費電力は105Wと、なかなか大きい。70型のテレビが設置できるリビングでも、あまり置きたいと感じる機器ではないのは間違いない。シャープでは、2018年12月までには、このチューナーをテレビに内蔵できるサイズにまで小型化したい考えだ。喜多村氏は「課題となる集積回路(LSI)を小型化する目処は立っており、2018年には筐体の中に受信機が入った普通のテレビになる」と説明した。
最後に喜多村氏は、2018年に向けたシャープの液晶テレビ事業を総括し、(1)感動の追求、(2)いち早い8Kテレビの提供、(3)関連製品も含めたラインアップの拡充を掲げた。
「感動を与えられる映像とは、真のリアリティ、本物感であり、8Kの高精細ならば実物と見分けが付かなくなるほどのリアリティを実現できる。2Dでありながら、本物さながらの立体感と臨場感が味わえる究極のディスプレイ。そして、8Kテレビをいち早く実現できるのは液晶技術だ。レコーダーなどの関連製品も含めてラインナップをそろえ、シャープが8K市場の導火線になりたい」(喜多村氏)。
また、有機ELパネルの採用は検討していないのかというメディアからの質問に対し、「顧客ニーズに応えることが第一なので、自社開発や液晶のみにこだわるつもりはない。だが、現状では液晶がベストなソリューションだ」と自信に満ちた表情で答えた。