カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2017」が2月23日から26日にかけ、パシフィコ横浜で開催された。アドビのブースでは25日、AKB48 チームBの竹内 美宥さん、写真家の保井崇志氏を迎えてスペシャルトークセッションを開催。Adobe Lightroomを使った現像や、SNSに写真を公開する際のコツなど濃密なトークが繰り広げられた。
保井崇志氏は30歳から趣味で写真を始めたという現在36歳の写真家。専業になったのは2年前からで、きっかけはInstagramで人気を得たことだという。使用カメラは富士フイルムのフラグシップモデル・X-T2で、予備も含め2台を所有しているとのこと。アドビが主催するクリエイターの祭典「MAX」ではキービジュアルを担当した実績も持っている。
竹内美宥さんはAKB48 チームBのメンバーとして活躍するアイドル。カメラが趣味の親戚からミラーレスカメラをプレゼントされたことが写真を撮り始めたきっかけだったとのことで、現在はお金を貯めて購入したキヤノンの5Dmark IVと、ニコンのフィルムカメラ・FM3Aで写真を撮っているという本格派だ。
仕事と趣味、それぞれで写真を撮っている二人だが、共通しているのが「SNSを活用している」ということ。
たとえば保井氏はInstagramで12万人以上のフォロワーを抱えており、4年間欠かさず写真をアップしているという。竹内さんはTwitterとInstagramの他、写真をまとめてアップロードする場としてPhotohitoを活用しており、メンバーやファンからも大きな反響を得ているそうだ。
仕事として写真を撮る保井氏は、一日で1,000枚以上の写真を撮ることもあるというが、本人曰く「これでもプロとしては少ない方」なのだとか。
大量に撮影した写真を管理・編集するのに保井氏が愛用しているのが、アドビの写真現像ソフト・Lightroomである。
大学のPCでAdobe Photoshopを最近使い始めたという竹内さんだが、Lightroomは初耳とのことで興味津々。ここからは、保井氏によるLightroomの使い方レクチャーがスタートした。
Lightroomは、写真の管理・編集・現像が可能なソフトで、プロ・アマ問わず多くの写真家に愛用されている。まず特徴的なのは、写真の管理方法だ。
「写真のデータはすべてLightroomで管理しています。一日写真を撮ると、どうしても同じような写真が多くなります。僕はRAWで写真を撮るのですが、それをLightroomに取り込み、納品する写真だけをセレクトして編集するのです」(保井氏)
RAWとは写真の形式の一つで、jpgになる前の「生データ」の状態を指す。Lightroomは、このRAWを自由に編集し、jpgに書き出せるのだ。非破壊編集のため、RAWデータさえ残っていれば画質を劣化させることなく何度でもやり直しができるのが特徴である。
保井氏はRAWについて「ネガフィルムみたいなもの」とフィルムに例えて説明。竹内さんも同じく写真が趣味という友人と「雪が降った日に写真を撮りに行ったんですが、これはRAWで撮った方がいいよねって話したりしました」と、RAW派であることを明かしていた。
このRAWデータを細かい部分まで自由に編集できるのがLightroomの魅力だ。ホワイトバランスや色かぶり、彩度、露出など基本的なパラメータをある程度自由に変更することができる他、「暗い部分(シャドウ)だけ明るくする」や、「明るい部分(ハイライト)だけ暗く戻す」といった編集も可能である。
お気に入りの編集はプリセットとして保存しておくこともでき、スマートフォンの加工アプリのような感覚でも使うことができる。
トークセッションでは、竹内さんが撮影した写真を保井氏がLightroomを使って編集するというデモンストレーションも行われた。
一枚目の写真は、美術館で撮影された写真。
そのままでも印象的な写真だが、保井氏はLightroomを使ってさらに完成度を高めていく。
まずは色相などを調整する保井氏オリジナルのプリセットで色味を変更した後、トリミング機能を使って写真を左右対称になるように補正。シンメトリー構図になることで、写真がさらに印象的になった。
また保井氏は、写真に写っている3人の人物に着目。赤、黄、緑の服を着ている3人が一枚の写真に収まった偶然性がユニークだと述べ、これを強調するために「円形フィルター」機能で明るさや彩度を上げる補正方法を紹介した。
円形フィルターは円で囲った部分のパラメータだけを変更できるフィルター。これには竹内さんも「すごい!」と驚きの表情を見せていた。
続いては竹内さんがニューヨーク留学中に撮影したという街のスナップ写真。
「僕のInstagramに上げたいくらい良い写真」と絶賛した保井氏は、この写真をさらに魅力的にするため、Lightroomで編集していく。
まずはUpright機能。建物など直線が多い被写体の場合、パースがついて建物が斜めに見えてしまうことがあるが、これをボタン一つでまっすぐに補正してくれる機能だ。
また、保井氏からは「グリッドを表示し、縦線と横線が交わるところに被写体を置くようにトリミングする」や、「RAWで暗めに撮っておくと、白潰れした空を戻すことができる」といったアドバイスもあり、竹内さんも感心したように聞き入っていた。
最後に、SNSに上げるときのコツについて。
保井氏にとってInstagramはポートフォリオでもあるとのことで、もっとも気にしているのはサムネイルがずらりと並んだときの「統一感」なのだという。
そこで保井氏はメインのアカウントに写真を投稿する前、別のInstagramのアカウントにテストとして写真をアップし、サムネイルが並んだときの全体の見栄えなどをチェック。納得がいったらメインアカウントに投稿するという流れでInstagramを活用しているという。
「同じような写真の傾向が続いているなと思ったら、桜(違う雰囲気の写真)を上げてみるとか……。フォロワーが多い人は必ずやっていると思います」(保井氏)
このやり方は竹内氏にとっても新鮮だったようで、「勉強になります!」と感心。
「たしかにInstagramでフォローしようって思うのは、一つの写真というより(アップしている写真全体の)統一感だったりします」(竹内さん)
最後に、保井氏は「写真はコミュニケーション手段として有効。ぜひLightroomで管理して、きれいな写真でコミュニケーションしてほしい」と挨拶し、竹内さんは「今までは写真を撮ることにワクワクがありましたが、編集することで楽しさが倍増しました。今後はPhotoshopとLightroomをたくさん使って勉強していきたいです」とコメント。トークセッションを締めくくった。