経営にも深く関与

ひとつ、ファンドというと資金投下するだけというイメージがあるかもしれない。お金を置くだけでは「情報革命で人々を幸せに」というファンドの理念が実現できそうにない。その点、孫氏は深く考えているようだ。

ファンドである以上、イグジット(株式の売却)は存在するが、3%や5%といった少量の株式を保有し短期間で売りぬくといったことはないという。多くの場合は、20-40%ほどの株式を持ち、筆頭株主として、役員を送り、創業者とともに経営戦略について議論する。そして有機的結合をつくっていく。

「情報革命で人々を幸せに」という理念のもとに、情報革命を牽引する同志を増やし、戦略を共有する同志的結合をつくりたいとしている。類似する考えに財閥があるが、同ファンドの場合は、ブランドや国籍などを問わず、それぞれの分野で世界一になりそうな会社が連合体として、シナジーを出していくことを理想としている。

ファンドを通じて目指すのは情報革命を牽引する同志的結合

ファンドの理念は人を幸せにできるか

孫氏が掲げる「情報革命で人々を幸せに」というファンドの理念。この理念自体は、ソフトバンクが掲げる理念とまったく同じ。ソフトバンクグループという単体の企業グループでは、資金力の面から成し遂げられなかった側面があり、それを解消できるのも今回のファンドの魅力だ。ソフトバンクグループよりも、投資対象の規模、広さ、スピードすべてを上回る決断ができる。

ファンドによる投資、資金を元手にした情報革命の推進。それが何百社にもおよび、同時多発的に進むことで、情報革命の時機到来は早まることになるだろう。孫氏が掲げる理念に近づく世界が生まれることへの期待は高まる。

しかし、その一方で、ファンドの莫大な資金は、力の一極集中を生み出してしまう。あらゆる産業を再定義するテクノロジー、重要性を増すインフラが、ファンドのメンバーによって握られてしまう可能性があることに、漠然とした恐れも感じてしまう。ソフトバンク・ビジョン・ファンドが世界の何かを変えていきそうだが、それは本当に多くの人に望まれたものになるのだろうか。