ドコモが追随しなかった理由とは
だが、こうした流れに乗らなかったのがNTTドコモである。同社の今年の「ドコモの学割」は、当初の学割モンスター(現在は「学割モンスターU25」に改名)と同様、1年間、月額料金を1,000円割り引く(新規契約者のみ。既存の契約者に対してはdポイント1,000円分を進呈)ものとなっている。同社は25歳以下に向けた割引施策「U25応援割」を以前から展開しているので、これと合わせることで、1年間最大月額1,500円の割引になるとしているが、目新しい要素はなくスタンダードな内容にとどまっている。
なぜ、NTTドコモが他社の施策に追随しなかったのかというと、そこには同社の料金の仕組みが大きく影響していると見られる。NTTドコモは高速データ通信容量をユーザー個別で契約するのではなく、主回線で契約しているデータ定額サービスの通信容量を、家族全体でシェアすることを基本に据えている。新入学生の回線は、基本的に既に主回線を持つ親が契約する副回線となることから、データ定額サービスの契約自体がない。それゆえ18歳以下のユーザーだけに向けて、段階制の料金プランを提供すること自体困難なのだ。
一方で、NTTドコモの料金プランはシェアを前提としていることから、副回線はデータ定額サービスの料金は不要で、月額500円のシェアオプション料金を支払うのみと元々安価だ。そうした一連の仕組み上の違いが、他社と同様の施策を打ち出さなかった大きな理由につながっているといえそうだ。
とはいえNTTドコモにとっても、新規ユーザーを獲得する機会が非常に少なくなっていることは事実であり、数少ない純粋な新規ユーザーを獲得できる春商戦は、これまで以上に重要な意味を持ってくることは確かだ。他社と同じ仕組みではないにせよ、今後18歳以下のユーザーに向けて何らかの優遇施策を打ち出してくる可能性は十分考えられるだろう。
一方で先にも触れた通り、最近はMVNOをメイン回線として利用するユーザーが増えてきており、今年は春商戦にもMVNOが大きく食い込んでくると見られている。それだけに今年の春商戦は、キャリア同士の学割施策の争いだけでなく、急伸するMVNOに対してキャリアがどこまで自社ユーザーを守り抜くことができるかも重要になってくる。
各社は料金の割引に加え、サービス面でも学生を優遇した施策を打ち出し体験価値を高めること、そして学生に人気のiPhoneが購入しやすいことなどをアピールしてMVNOとの差異化を図ろうとしているが、そうした取り組みによって節約志向が高まる親世代を打ち崩し、契約に結び付けられるかも、大きな注目ポイントとなってくるだろう。