ドローンを7つの圃場で飛ばし28品目の生育を見守る

ドローンについては、オプティムが数種開発した「アグリドローン」を利用し、IT実験用の圃場と通常圃場とで作物の生育具合を比較しながら進めている。ドローンの性能は5mの高さから葉に空いた1mmの穴を見つけられるほどだという。撮影した画像を解析することで葉の色、穴、付着物などを検出し生育の度合いや病害の有無などを見分ける。また、通常の画像だけでなくマルチスペクトル撮影なども行い、積算温度などの把握も行っている。

農薬散布や害虫駆除に関しても、ドローンが活躍する。事前に飛行ルートを設定して、自動航行させることはもちろんのこと、RTK-GPSを利用して数10cm~1m四方程度にまでドローンの位置コントロールができ、農薬の飛散量なども鑑みると約1m~3m四方を狙ってピンポイントでの農薬散布が可能になるという。できる限り農薬を使わないことで作物の安心・安全の度合いを向上させる狙いに加えて、無駄な農薬を使わないことによるコストダウンも同時に狙える取り組みだ。

アグリドローンの概要

一方、ハウス栽培されるようなものに関しては、ドローンで対応できない部分を自走式の全天候カメラを備えた「アグリクローラー」でカバーする。低い位置で栽培される作物など、ドローンで対応が難しいものに対しても有効となっている。

アグリクローラーの概要

現在、大豆農家1件とタマネギなどの露地物を手がける農業法人1件に加えて、5カ所の農業試験場の計7カ所で、季節ごとに栽培される作物の生産に取り組んでおり、すべての作物は実験中という状態だ。しかし、それでも地元の期待は高いという。

「これはITの活用のおかげなのか、その農家さんが熱心に取り組んだ結果なのかは現状では判断できないですが、実証実験に参加している農家さんが周囲と比べて病害が少なかったという実績が出ています。そういうことで注目はされていますね」と休坂氏。ドローンを飛ばしている様子なども、興味深く見守られているという。

ウェアラブル端末で名人芸の伝承や後継者育成

ウェアラブル端末を利用した事例としては、名人と呼ばれるが高齢化している先代が家庭でPCごしに作業者に指示し、果樹の間引きや収穫についてのアドバイスを行う様子が紹介された。ネットワークごしに具体的な指示を受けることで、技術伝承をスマートに実現する仕組みだ。

また、名人芸的なものの伝授に加えて、知識のない作業者に対する補助を行うことで就農労働者の減少や後継者不足などに対応が可能だという。体力の衰えにより、高所作業などが難しい場合でも簡単に指示ができるほか、1人で複数人を相手にフォローアップ作業ができるなど、育成や技術伝承の面で大きな効果がありそうな取り組みだ。

ウェアラブル端末を活用した作業の概要

一方、実証実験中ではあるものの、すでに収穫された作物の一部は「スマートやさい」というブランド化を狙った農産物マーケティングの動きが始まっている。生産から流通、加工、消費までの工程をトレースすることで安心・安全で高品質な野菜を提供する取り組みだ。

現状では量が限られているため関係者間でのやりとり程度だが、近く一般市場に出てくる可能性はあるという。「2017年頃から市場に投入できるものが出てくると考えています。単純にマーケットで販売するというのではなく、ふるさと納税のお礼品のような形での活用もあるかもしれませんね」と説明した。