下取りを基準にすることで生じる新たな抜け穴

では、このスマートフォンの下取り価格が販売額の下限とされた場合、どの程度スマートフォンの値段が上がると考えられるだろうか。

ここでは最新の「iPhone 7」の32GBモデルを対象として、各キャリアのオンラインショップにおけるMNPで乗り換えた際の端末実質負担金(5GBのデータ定額サービス契約時)と、その2世代前のモデルとなる「iPhone 6」の、各キャリアが展開する下取りキャンペーン(NTTドコモ「下取りプログラム」、au「下取りプログラム(乗りかえ)」、ソフトバンク「のりかえ下取りプログラム」)における下取り価格を比較してみた。その結果が下表の通りとなる。

各キャリアのiPhone 7(32GB)の、MNPでのオンラインショップ販売価格と、iPhone 6の下取り価格の比較

この結果を見るに、下取り価格を基準とした場合、最新iPhoneの販売価格は今後、約2万円が下限となる可能性が高いといえそうだ。

だが一見確実な値上がりへとつながるこの仕組みも、実は必ずしもそうとは言い切れない。実際上の例を見ても、NTTドコモは実質負担金が下取り価格よりも高く、改訂されたガイドラインでは端末の値下げにつながる可能性もある。

またauの下取りプログラムでは、iPhoneや、他キャリアのAndroid端末の下取り価格は高額だが、Android端末の下取り価格は1万円を切るケースも多く、自社販売のAndroid端末の買い取り価格に至っては一律で3,000円と、非常に安価に設定されている。それゆえ下取り価格を基準にした場合、一部シリーズのAndroid端末は現状の1万円より安い価格で販売できるケースも起き得るわけだ。

またそもそも、iPhoneのように1世代、2世代前の機種が存在しないモデルは、何を基準に価格設定をすればよいのか?という疑問も生じてくる。そしてこうした矛盾や曖昧な点は、そのまま実質0円販売への"抜け穴"へとつながる可能性が高い。

一連の会合での議論を見るに、実質0円販売の禁止は通信料引き下げを実現するための手段であるはずが、その実現が目的化してしまっているように見える。実質0円の撲滅に向けた取り組みを性急に進めるあまり、多くの矛盾を生み出し、その穴埋めのために議論を繰り返すいたちごっこが、通信料引き下げに向けた正しい姿なのか。いま一度議論の根本に立ち返る必要もあるのではないだろうか。