ヴイエムウェアは11月8日と9日の2日間にわたり、東京都内において同社の年次イベント「vFORUM 2016 TOKYO」を開催。初日の基調講演には、米ヴイエムウェアでCEOを務めるパット・ゲルシンガー氏が登壇し、今年8月に発表した新たなマルチクラウド戦略となる「Cross-Cloud Architecture」と、それを実現する統合SDDC(Software-Defined Data Center)プラットフォーム「VMware Cloud Foundation」を紹介した。

冒頭、登壇したのは、ヴイエムウェアで代表取締役社長を務めるジョン・ロバートソン氏である。同氏は、日本市場における直近3四半期の売上成長率が24%増、新技術分野における前年比成長率が66%増、国内のパートナー企業数が2400社超であることを紹介。堅調なビジネスの成長ぶりをアピールした。

ヴイエムウェアで代表取締役社長を務めるジョン・ロバートソン氏

新技術分野で成長が著しいのは、ソフトウェアストレージの「VMware VSAN」で、成長率は750%となった。そのほか、ネットワーク仮想化の「VMware NSX」も110%となっている。ロバートソン氏は、「VMware NSXは2年前から導入検証が始まったばかりだが、すでに約200社で導入されている」と説明した。

ロバートソン氏は「グローバルでの平均成長率は9%、いかに日本が堅調であるかを理解いただけと思う」と胸を張った

「自由」と「コントロール」を両立した「Cross-Cloud Architecture」

続いて登壇したゲルシンガー氏は、「デジタルトランスフォーメーション」の重要性を訴えた。すべてのビジネスがデジタル化する現在において企業は、柔軟性の高いクラウドとモバイルを中心に据え、IT技術の進化とビジネス環境の変化、そしてユーザーのニーズに応じて臨機応変に対応していかなければ生き残れない。そのために必要なのは、「(デジタルトランスフォーメーションを推進するという)企業文化の変革」であるというのが、ゲルシンガー氏の主張である。

米ヴイエムウェアでCEOを務めるパット・ゲルシンガー氏

同時にデジタル・トランスフォーメーションが進み、あらゆるモノ/人が"デジタルでつながる"将来においては、デバイス管理やIT部門の管理下にない、いわゆる「シャドーIT」も増加する。ゲルシンガー氏は、「2030年にはパブリッククラウドの利用率は52%になると予測されている。こうした状況において必要なのは、『自由』と『コントロール』が両立できるクラウド環境であり、それを具現化したのが『Cross-Cloud Architecture』だ」と訴えた。

Cross-Cloud Architectureは、現在利用しているVMware環境を、プライベートクラウドでもパブリッククラウドでも利用できるアーキテクチャである。統合SDDCプラットフォームの「VMware Cloud Foundation」と、アプリケーションを横断的に管理できる「VMware Cross-Cloud Services」で構成されている。

VMware Cloud Foundationはハイパーコンバージド・インフラ(垂直統合型システム)で、ストレージ管理やクラウドの自動化、ネットワークの仮想化といった大規模環境でSDDCを実現させるための機能を包含している。すでにヴイエムウエアはIBMやAmazon Web Services(AWS)とも提携を発表しており、「ユーザーは(VMware Cloudが)より簡単、迅速に利用できるようになる」(ゲルシンガー氏)としている。基調講演ではAWS上でVMware Cloudを展開するデモが披露された。なお、同サービスは米国で2017年半ばに開始される予定で、国内での提供は未定だという。

「VMware Cross-Cloud Services」は、2017年内に提供が開始される予定だという

クロスクラウドでも一貫したセキュリティポリシー

一方、VMware Cross-Cloud Servicesは、AWSをはじめ、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」などのクラウド上で稼働するアプリケーションも横断的に管理できる機能を提供する(関連記事)。

SaaS(Software as a Service)モデルで提供されるVMware Cross-Cloud Servicesは、マイクロセグメンテーションとモニタリング、パブリック クラウド アプリケーションのディスカバリ、オンボーディングなど、セキュリティとコンプライアンスを管理する。ゲルシンガー氏は、「これまで(パブリック/オンプレミスといった)複数のクラウド管理は煩雑であるという課題があった。VMware Cross-Cloud Servicesはそうした悩みを解消するものだ」と語る。

VMware Cross-Cloud Servicesのデモに登壇した米ヴイエムウェアのネットワーキング セキュリティ部門プロダクト担当副社長であるミリン・デサイー氏は、「複数のクラウドで一貫したセキュリティポリシーを確保するのは困難だったが、VMware Cross-Cloud Servicesでは異なるクラウドサービス間でも単一の操作性で実現できる」と訴求した。

Cross-Cloud Servicesの概要

ヴイエムウェアはvFORUM 2016 TOKYOに先立ち、日本国内におけるハイブリッドクラウドの新戦略とパートナーシップを発表している(関連記事)。Cross-Cloud Architectureの導入はこれからであるが、すでに複数の企業では、NSXやSDDCなどの導入で、デジタル・トランスフォーメーションを実現している。基調講演では、ユーザー事例として、大和総研、東レシステムセンター、ドコモ・システムズの3社が登壇。それぞれの取り組みを紹介した。

例えば東レシステムセンターでは、2020年を目標にハイブリッドクラウド化を推進している。具体的には、ハイパーコンバージドによるSDDCを構築し、ハイブリッドクラウドを前提としたアーキテクチャを採用。すべてのリソースをプール化し、複数のクラウドを統合管理する。登壇した同社代表取締役社長の田邊裕久氏は、「ユーザーがオンプレミス/パブリックを意識することなく利用できるクラウドブローカーを目指す」そのビジョンを語った。

東レシステムセンター社代表取締役社長の田邊裕久氏