サイバーリンクが開発、販売するビデオ編集ソフトウェア「PowerDirector」の新バージョン「PowerDirector 15」の製品発表会が13日に開催された。今回の大きな目玉は、360度動画への対応だ。また、同時に写真編集ソフト「PhotoDirector」の新バージョン「PhotoDirector 8」も同時にリリースされた。ここでは発表会で紹介された「PowerDirector 15」の新機能をレポートしていく。

図1 PowerDirector 15

図2 PhotoDirector 8

PowerDirector 15の新機能

まずは、PowerDirector 15の新機能を簡潔にまとめてみよう。

  • 360度動画への対応(Ultimate Suite/Ultraのみ)
  • ブレンドエフェクトデザイナー搭載
  • マスクデザイナー
  • TrueTheater Color
  • スマートフォン向け縦向き動画編集(Ultimate Suite/Ultraのみ)

旧来の機能でも、バージョンアップにあたり機能強化されたものもあるが、注目は360度動画への対応だ。今は一般ユーザーでも購入しやすい360度カメラが登場してきており、スマートフォンで360度動画やVR(Virtual Reality:仮想現実)動画を視聴できるヘッドマウントディスプレイも豊富。「PlayStation VR」など、ゲームなどでもVRの活用が進んでいる。

またYouTubeやFacebookの動画機能などにも注力され、PowerDirector 15では縦向き動画編集および作成動画のSNS投稿機能が追加されている。

図3 会場で展示されたVRヘッドマウントディスプレイや360度カメラ。実際にデモを体験することもできた

PowerDirector 15を起動すると、メインメニューに新たに、360度動画のメニューが追加される。360度動画は、ライブラリでは右上に「360」の文字が表示され、タイムラインにドラッグ&ドロップすると、360度動画のプロジェクトを作成するかの確認が行われる。

図4 PowerDirector 15のメインメニュー

図5 360度動画のプロジェクト作成

実際の機能としては、以下がある。360度動画の編集は、ソースが360度動画であるだけで、従来の動画編集と変わることは少ない。

  • 360度カメラで撮影した動画、写真のインポート
  • 正距円筒図法をサポート(Equirectangular:エクイレクタングラー)
    ※正距円筒図:緯度・経度を2軸として球体を2次元画像(四角形)化する図法。地図などに使われる
  • 360度プレビューと通常プレビューを切り替え可能
  • Facebook、YouTubeに直接360度動画としてアップロード
  • カット編集、360度対応エフェクト、タイトル編集、トランジション、ビデオ補正、ピクチャーインピクチャーなどの編集機能

従来の動画編集と異なる点は、360度動画から、表示アングルを指定して2D動画(一般的な再生環境で再生できる)への編集・変換が選べる点だろう。これは360度動画を動かし好みのアングルを選んでいくことで、360度動画から2D動画を作成できる「ビューデザイナー」機能で行える。

図7 ビューデザイナー。右下の青い領域(アングル)を切り出して、従来の2D動画へと変換している。編集機能なども含め、360度動画がいかに身近になったかが体感できるだろう

ColorDirector 5とAudioDirector 7の新機能

ColorDirector 5とAudioDirector 7は、単体でも購入可能なカラーグレーディングソフトとオーディオ編集ソフトである。PowerDirectorと連携することで、より高品位の動画作成が可能になる。これらの新機能と注目機能についても紹介しておこう。まずは、ColorDirector 5の新機能から。

  • カラースプラッシュ
  • カラーシフト
  • プレビューのレンダリング
  • マスクのコピー&ペースト

カラースプラッシュは特定の色のみを残し他の色をモノクロにする、CMなどでもよく見られる色彩効果。マウスで残したいオブジェクトを選ぶだけで、簡単に作成することができる。さらに、動画全体の色味を好みの色へ統一するカラーシフトと組み合わせることで、より効果を高められる。

図8 カラースプラッシュとカラーシフト

AudioDirector 7の新機能は以下の通り。

  • ピッチベンダー
  • ステレオ拡張

ピッチベンダーは、キーフレームを使って動画の任意の区間を指定してピッチを自由に変更する。たとえば、動画の一部をスローモーションにした場合に、その動きに合わせ音声の再生速度も変更する。ステレオ拡張は、音声を拡張して、より空間的な広がりを作り出す。

従来から搭載されているノイズ除去機能「ビジュアルリペア」も引き続き搭載。同ソフトには複数の除去機能があるが、ビジュアルリペアでは、サイレンや警告音などの不要な背景音を見た目で除去できる。操作はサイレンなどの余計な背景音は、グラフ上に棒のような形状で表示される。そこの部分を矩形選択ツールなどで選択し、[適用]をクリックするだけ。これで、見事にノイズが除去される。使ってみると、かなり便利な機能だ。

図9 ビジュアルリペア

ビデオから写真を保存:PhotoDirector 8

最後に、写真編集ソフト最新版「PhotoDirector 8」の新機能も紹介しておこう。

  • ビデオtoフォトクリエーター
  • クイックテンプレート(上位版のみ)
  • オーバーレイ
  • モーションブラー(上位版のみ)
  • カラースプラッシュ

今回の新機能で注目したいのは、「ビデオtoフォトクリエーター」である。一言でいってしまえば、動画からさまざまな写真を作成する機能だ。全部で4つの機能がある。

図10 ビデオtoフォトクリエーター

「フリーシャッター」は、ビデオの1フレームを写真として保存し、4K動画などでは高画質の写真を複数作成できる。あとの「パノラマ写真」「ベストグループショット」「モーションフォト」の3つは、フリーシャッターを応用した機能で、複数のフレームをキャプチャーして、そこからさまざまな写真を作成できる。ここでは、ベストグループショットを紹介しよう。

図11 ベストグループショットに使う動画

上の写真は全部で5人の被写体がいるが、全員同時に笑っていない。そこで、笑っているシーンをキャプチャしていく(右のペインにスタックされる)。キャプチャしていった写真は一度ライブラリに保存し、[結合]を行う。すると笑顔を自動的に判断し、全員が笑っている写真を合成する。

図12 合成された写真

さらに、別の笑顔を選びたい場合は、フレームをクリックすると、他の候補が表示され、そこから別の笑顔を選ぶことができる(図13)。従来機能「顔入れ替え機能」を、動画にも応用した機能だ。

図13 別の笑顔を選択

製品ラインナップと価格

PowerDirector 15やPhotoDirector 8の製品ラインナップでは、ダウンロード版とパッケージ版の2種類が用意されている。ダウンロード版のPowerDirector 15関連製品は下表の通り(2016年9月13日から販売開始)。

ダウンロード版のPowerDirector 15関連ラインナップと価格(税込)

製品名 ダウンロード通常版 ダウンロードアップグレード版
Director Suite 5 26,980円 19,980円~
PowerDirector 15 Ultimate Suite 20,980円 12,980円~
PowerDirector 15 Ultimate (サイバーリンクWebサイト限定版) 15,980円 11,980円~
PowerDirector 15 Ultra 12,980円 8,480円~
ColorDirector 5 11,980円 8,980円
AudioDirector 7 11,980円 8,980円

次いで、パッケージ版のPowerDirector 15関連。こちらは、2016年10月14日から、店頭販売が開始される。

パッケージ版のPowerDirector 15関連ラインナップと価格(税込)

製品名 通常版 乗り換え・アップグレード版 アカデミック版 公認テクニカルガイドブック版
PowerDirector 15 Ultimate Suite 21,060円 15,120円 12,960円
PowerDirector 15 Ultra 15,660円 8,856円 8,640円 17,820円
PowerDirector 15 Standard 5,238円

次は、ダウンロードロード版のPhotoDirector 8関連のラインナップと価格である(2016年9月13日に販売開始)。

ダウンロード版のPhotoDirector 8関連ラインナップと価格(税込)

製品名 ダウンロード通常版 ダウンロードアップグレード版
PhotoDirector 8 Suite 15,980円 9,980円
PhotoDirector 8 Ultra 9,800円 6,800円
PhotoDirector 8 Standard 4,800円

最後に、パッケージ版のPhotoDirector 8関連。こちらは、2016年10月14日から店頭販売が開始される。

パッケージ版のPhotoDirector 8関連ラインナップと価格(税込)

製品名 通常版 乗り換え・アップグレード版 アカデミック版
PhotoDirector 8 Ultra 9,936円 7,020円 5,940円
PhotoDirector 8 Standard 4,860円

上位エディションほど、機能や付属するエフェクトやテンプレートの数が多くなる。基本的には上位エディション選択すれば、後から「使いたい機能がなかった!」という問題は避けられるだろう。逆に、下位エディションを選ぶのは、やりたいことが明確な場合におすすめだ。サイバーリンクでは、30日間の無料体験版も用意している。興味を持った方は体験版から利用してみるとよいだろう。