米国、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国で7月6日にサービスが開始された「Pokemon GO」だが、開始から1週間も経たずに早くも社会現象化して話題となっている。あるデータによれば、デイリーのアクティブユーザーは公開2日ですでにTwitterに匹敵する水準に達し、ゲームアプリの利用時間も他の著名サービスをすでに大きく抜く水準に達するなど、急速にその存在感を増している。Pokemon Goはこの後に対象地域の世界拡大を控えており、しばらくはインターネット上の話題を独占することになりそうだ。
アクティブユーザー数はツイッターに匹敵
Pokemon GOは拡張現実(Augmented Reality: AR)とGPSの仕組みを使って現実のフィールド上でポケモンの収集やトレーニング、バトルを行うゲームとなっており、現在AndroidとiOS向けのアプリが提供されている。任天堂などと共同開発を行ったのは米Nianticで、同社は世界的ブームとなったAR+GPSゲーム「Ingress」の開発でも知られる。簡単にいえば、これまで携帯ゲーム機の枠に収まっていたポケモンが、Ingressタイプのゲームになったものだと考えればわかりやすいだろう。
今回興味深いデータを出しているのはSimilarWebで、5種類のデータからその盛り上がりを分析している。ひとつめは「Tinder」というアプリとの比較で、同アプリのAndroidインストール率がPokemon GO公開から2日とかからずにすでに抜き去っているという。Tinderはいわゆる「出会い系アプリ」として知る人ぞ知る存在で、初公開から5年経った今でも「話題の出会い系ツール」としてたびたび紹介記事が出てくるほどの人気アプリだ。
Pokemon GOの現在のポジションを端的に示しているのが「アクティブユーザー率」のTwitterとの比較で、公開4日目にしてTwitterに匹敵する水準にまで上昇している。原稿執筆時点(日本時間:2016年7月12日)ですでに1週間弱が過ぎているため、おそらくTwitterはすでに抜いているものと考えられる。
Twitterに限らず、SNSのフィールドでPokemon GOが他のサービスの滞留時間やアクセスを大きく侵食しつつある様子は3つめのデータからうかがえる。7月8日(米国時間)時点での1日のアプリ利用時間は、Pokemon GOが43分以上なのに対し、WhatsAppで30分強、Instagramで25分強、Snapchatで23分弱、Facebook Messengerで13分弱だ。1日は有限なので、Pokemon GO出現後は必然的に他のサービスは割を食う形となる。
そして、APKMirrorへのアクセスが7月5日(米国時間)以降に大きく上昇していることが確認できる。APKMirrorはGoogle Playと同じアプリが利用できるミラーサイトの一種で、その利用の最大の目的は「ダウンロードに地域制限のあるアプリの対象地域外からの利用」「人気アプリにダウンロードが集中してアクセスしにくい場合の対策」の2点にある。
つまり、今回Pokemon GOの配信が開始された3カ国以外の対象地域外から同アプリを利用するため、APKMirrorの利用が急速に広がったと推察されている。それが証拠に、トラフィックは世界中にまんべんなく分散しており、この傾向を裏付けているといえる。なお、いちどアプリをダウンロードさえできてしまえば、例えば対象地域外である日本でもPokemon GOは問題なく利用できる。
「km」を「マイル」に換算
Pokemon GOのブームは世界中で興味深い現象を巻き起こしている。この手のサービスでアクセスが集中してサーバが落ちるのはよくある話だが、この原因が本来は対象地域外である海外からのアクセスであるとしてオーストラリアのユーザーが英国ユーザーを非難していたり、Pokemon GOの世界での標準の距離単位である「km」の意味を理解できず、米国ユーザーが必死に「マイル換算」のためにGoogle検索をしまくっていることが報告されたりと、興味深い事件(?)があちこちで起こっている。
Pokemon GOがきっかけで会社解雇
また、シンガポール在住で同国でPokemon GOがプレイできないことに対してシンガポールをけなす書き込みをFacebook上に投稿したある男性が、周囲から非難殺到しシンガポール拠点の会社から解雇されてしまったことも話題だ。このほか、ポケモンを探して歩き回っていた米国のある女性が遺体を発見してしまったなど、GPSゲームが思わぬ副産物を生み出していたりもする。
任天堂の株価は40%以上急上昇
こうした背景を受け、Pokemon GOを共同開発した任天堂の株価は40%以上急上昇し、時価総額にして8,000億円近くがわずか数日で増える結果となった。数年前までの全盛期の水準には届かないものの、最近あまりよい話題のなかった任天堂には大きなサプライズとなった。いずれにせよ、日本上陸も間近だと思われ、こうした話題で国内もしばらく盛り上がることだろう。
(C)2016 Niantic, Inc.
(C)2016 Pokémon.(C)1995-2016 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.