かつてはiPhone 4Sも

実は、ワイモバイルがiPhoneを扱ったのは、今回が初めてではない。ワイモバイルの前身の1社であるウィルコムのショップで、2013年にソフトバンクモバイル(当時)のiPhone 4Sを取り扱っていたことがあったのだ。

この際、iPhoneの回線の契約先はあくまでソフトバンクモバイルであり、料金プランも当時のソフトバンクモバイルのものであったことから、大きな成果が得られたわけではなく取り組みも短期間で終了している。だがそうした取り組みからは、ソフトバンクが以前より、ソフトバンク以外のブランドでiPhoneを販売する方向性を探っていたことがうかがえる。

ワイモバイルの前身の1つでPHSなどを提供してきたウィルコムは、2013年の一時期、ソフトバンクモバイルのiPhone 4Sを扱っていたことがある

ただ、大手キャリアがサブブランドのiPhone販売に大きく影響しているだけに、キャリアのメインブランドで取り扱っている最新のiPhoneを、サブブランドで扱うわけにはいかない。UQ mobileやワイモバイルがiPhone SEではなく、型落ちのiPhone 5sを扱っているのには、メインブランドとサブブランドの力関係が大きく働いていると考えられる。

iPhone旧機種に需要は?

しかしそもそも、既にiPhone 6sやiPhone SEまでもが登場している中、いくら安価に提供されるとはいえ、型落ちのiPhone 5sに需要があるのか? という疑問を抱く人もいるかもしれない。そこで考慮する必要があるのが、国内における圧倒的なiPhone人気と、実質0円の事実上禁止である。

そもそも、日本でこれだけiPhoneが高い人気を獲得したのには、iPhoneの販売価格が大きく影響したことを忘れてはならないだろう。実は日本でiPhone人気に火が付いたのは、ソフトバンクが2009年にiPhone 3Gを0円で販売する「iPhone for Everybody」キャンペーンの影響が大きい。当時販売が低迷していたiPhoneを、ソフトバンクが0円で販売するという捨て身の戦略が功を奏し、人気を高めるのに成功したのである。

その後iPhone人気に追従するべくau、そしてNTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始したが、各社とも販売するiPhone自体に差はないことから、各キャリアともいかにiPhoneを安く提供するかに力を入れ、激しい値下げ合戦が繰り広げられた。その結果、日本でスマートフォンを購入するならiPhoneが最も安いという市場環境を作り出し、それが日本でiPhoneの人気を高める大きな要因となったのである。

しかしながら昨年実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、総務省は今年、スマートフォンを実質0円で販売するなど、過剰な割引をすることを事実上禁止した。その結果、元々非常に高額なiPhoneを安価に販売することは難しくなり、大手キャリアが販売するiPhoneの店頭価格も高騰してきている。