生産性のツールから、人と組織に活力を与えるツールへ

SNSの世界ではFacebookのような、仕事中も含めて開きっぱなしのウェブサイトというポジションを獲得できなかったLinkedIn。これを買収したマイクロソフトの狙いはどこにあるのだろうか。それは、マイクロソフトが現在行っている「変革」に注目すると、非常に有効なピースであることがわかる。

マイクロソフトのビジネスアプリケーションのポートフォリオは、Word、Excel、PowerPointなどでおなじみのOfficeから始まり、メールや連絡先などの情報を管理するサーバ環境Exchange、共有やコラボレーションを支援するSharePointやLyncといったサーバ製品、クラウド環境Azure、そして業務基幹システムと顧客管理を束ねたDynamicsがある。

これらに加えて、ビデオ会議プラットホームのSkypeを2011年、社内コミュニケーションアプリYammerを2012年にそれぞれ買収しており、オフィス内でのコミュニケーションについて強化してきた。

LinkedInの買収はマイクロソフトのサービス領域との融合を可能にするという(マイクロソフト説明資料より)

このように見ていくと、マイクロソフトは、働く人個人の生産性向上をOfficeで追求しながら、そしてチームや職場といったサイズのコミュニケーションやコラボレーションを支えるソリューションを拡充してきた。いうなれば、今、この瞬間の個人や組織のためのツールを提供してきた、ということになる。

過去と未来の情報と外部との接続を取り持つLinkedIn

LinkedInが持っているのは、プロフェッショナルとしての個人が、過去どんな学問を修め、どんな企業で、何に取り組んできたか、どんな人とつながっているか、という情報だ。

そうした個人が集まって、企業という組織を構成している。すると、その企業内にどんなタレントが眠っているのかを見つけることができるようになる。あるいは、全く別のチームにいる人のスキルを活かしてより良い結果を得られるようにすることもできるだろう。

LinkedInは、企業内で利用する上で、ダイナミックな人材活用の手段を提供する可能性がある。加えて、企業外で利用する際にも、人材募集や協業をする上での判断材料を与えてくれる。ポイントは、これらの機能がマイクロソフト製品を導入しているビジネス顧客に解放されることだろう。

加えて、時間軸のダイナミクスへの取り組みにも興味がある。あらゆる人も企業も、過去・現在・未来の時間軸の中を生きている。LinkedInが保管するのは、人とタレントにフォーカスして、その人のキャリアや企業がどんな過去を過ごしてきたかがわかり、これからどんな未来をたどるのかを予測する材料を提供してくれる。

その活かし方は様々だ。例えば、人材育成や、せっかく獲得した人材がやめないような社内でのキャリアパスの設計やマッチングも可能になるだろう。