日本ではラジオ広告費が減少基調にあるが、ネットラジオが盛んな米国では、ラジオ広告市場が1兆円を越える巨大なマーケットを形成している。日本に米国のような市場が誕生する可能性はあるのだろうか。ネットラジオの収益化に不可欠な音声広告手法を手掛けるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)で話を聞いた。

左からDACプロダクト開発本部 シニアマネージャーの砂田和宏氏、テクノロジーサービス本部 第二システム開発部長の紙田拓弥氏、プロダクト開発本部 広告技術研究室長の永松範之氏

規模が違う日米のラジオ事情

まずは日本のラジオ業界が置かれている現状を電通の調査「日本の広告費」で確認すると、ラジオ広告費は1991年の年間2,406億円をピークに減少を続けており、ここ数年は同1,200億円台で推移している。ビデオリサーチの調査で聴取率を見てみると、首都圏に住む12歳から69歳までの男女のうち、2016年4月18日からの一週間で、ラジオを実際に聴いた人の割合は平均すると6.8%。2015年12月にFM補完放送(いわゆるワイドFM)が始まったこともあってか、聴取率は半年前の調査から1%増加した。首都圏の聴取率1%は約36万人に相当する。

米国のラジオ業界はどのような状況なのだろうか。DACの永松氏によれば、米国でネットラジオを含むラジオを聴いている人(リスナー)は1.5億人に達するという。車社会の米国ではカーラジオと接触する機会も多く、ラジオを聴くという文化は昔から根付いていたが、ネットラジオの登場でリスナーが全国レベルで増えたのだ。

巨大なラジオ広告マーケットが生まれた米国

国土の広い米国では、インターネットがラジオを米国全土に行き渡らせた。オンデマンド配信の番組ならば、聴きたいときに聴けるのもネットラジオの特徴。米国では、インターネットがラジオから時間と空間の制約を取り去ったわけだ。多くのリスナーを獲得したラジオの媒体価値は向上し、広告市場は日本の10倍以上、金額にすると1兆円超の規模に成長した。

2010年に登場した日本の「ラジコ」も一種のネットラジオといえそうだが、米国とは事情が大きく異なっている。ラジコには80を超えるラジオ放送局が参加しているが、配信しているのは、CMを含めて地上波放送と全く同じ内容。ラジコ独自の音声広告を導入するには至っていないのが現状だ。ラジコの登場でラジオは聴きやすくなったが、日本に独自の広告市場を有するネットラジオの経済圏が誕生したかというとそうではない。