「iHeartRADIO」や「Tunein」といった、米国で人気のネットラジオが使っているのが、音声広告をリスナーの属性に合わせてターゲティング配信する仕組み。聴いている人の端末から得られる情報を分析し、その人の年代、性別、興味のある分野などに合わせた広告を配信するシステムだ。同じ番組でも、聴いている人に合わせて異なる広告を配信できる同システムは、リスナーの属性を把握したうえで広告を出稿したいと考える企業(広告主)に訴求力が高い。

日本にネットラジオ勃興の機運?

音声広告のターゲティング配信はネットならではの技術で、地上波放送がメインの日本のラジオ業界では真似のできないシステムといえるが、この広告手法に取り組む日本企業は、ここへきてにわかに増えて始めている。そのうちの1社がDACだ。

DACは自社で保有する膨大なオーディエンスデータと連携し、ユーザーの属性に応じた音声広告を配信できる音声広告アドサーバー「FlexOne APE(フレックスワン・エイプ)」を先頃リリースした。この仕組みは「インターネット×音声」という組み合わせであれば様々な方法で活用が可能。DACの紙田氏は「(音声の分野であれば)可能性は無限大」とFlexOne APEの将来性に自信を示す。

FlexOne APEはDACが保有するデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)「AudienceOne」と連携している。AudienceOneにはスマートフォンなどから得られるcookie情報など、1兆件のデータが蓄積されているという

同社がFlexOne APEの導入先として想定しているのは、ネットラジオ、音楽配信サービス、アプリ、webサイトなどの分野。ラジオ業界がネットラジオに対応し、音声広告のターゲティング配信を導入すれば、その広告市場は飛躍的に拡大する可能性がある。

ネットラジオへの取り組みとして、注目したいのがTBSラジオの新サービスだ。リスナーの属性が把握できないポッドキャストの終了を決め、新たに「TBSラジオクラウド」を立ち上げた同社。新サービスの収益化に向けては、音声広告のターゲティング配信を導入する姿勢を示している。規模は小さいながらも、広告収入による無料放送を目指すネットラジオが日本にも誕生したというわけだ。