キャリアへの投資に否定的な新社長

海外投資では泣かされ続けてきたドコモだが、タタを最後に積極的な海外投資は終わりを迎えそうだ。ドコモの吉澤和弘新社長は海外展開に積極的な姿勢を示していないからだ。

社長就任会見で吉澤和弘氏

先日行われた社長就任会見で吉澤氏は「キャリアの規模が大きくなっているため出資は難しい」と、海外通信キャリアへの投資はきっぱりと否定する。続けて「ドコモは(出資先の)ネット・モバイルやボンジョルノにおいて、モバイルキャリアを相手に決済、課金プラットフォームを提供している。そうしたビジネスを大きくしていく余地はある」としつつも「投資ということではなく」と前置きをしている。さらに「モバイルICTソリューションをNTTグループ全体で考えていくことはある」と述べるが、こちらも「出資関係ではいかないと思うんですけど……」と補足する。海外投資の可能性をゼロとは言わないまでも、ドコモ発足当初から同社に在籍し、すべてを見てきた吉澤氏にとって、海外投資はあまりいいものに映っていないようだ。

こうしたスタンスは、ソフトバンクグループとは対照的だ。ソフトバンクグループは「ソフトバンク 2.0」というキーワードを掲げ、海外への事業投資を積極的に進めている。先日、代表取締役副社長の退任が決まったニケシュ・アローラ氏を中心に、米国、インド、東南アジアの有望な企業への投資を積極的に進めてきた。もはや、国内通信事業を担うソフトバンクは、ソフトバンクグループをなす一企業の位置になり、半投資会社化していた感がある。海外投資に否定的なドコモ、その逆をいくソフトバンクグループ。どちらが正しい道をたどっていることになるのだろうか。