Webブラウザの戦いは終わらない――。2015年1月、ブラウザ市場に新星「Vivaldi」が登場した。手がけるのは、「Opera」を共同創業したJon Stephenson von Tetzchner氏を中心とした元Operaチーム。組織でも製品でも「疑うならオプションを」をスローガンに、意見が分かれるのならオプションをつくって両方のニーズを満たすというアプローチをとる。モットーは「友人たちのためのブラウザ」(Browser for our friends)――こんなブラウザが欲しかったという全てのユーザーのニーズを満たすことだ。
今回、2016年4月末に来日した、Vivaldi Technologiesの共同創業者でCEOのvon Tetzchner氏に話を聞いた。
東京・秋葉原のパーツ通りにて。日本では"テッちゃん"の愛称で知られる、Vivaldi Technologies CEOのJon Stephenson von Tetzchner氏(右)と、共同創業者でCOOの冨田龍起氏(右) |
――初のメジャーリリースであるVivaldi 1.0が4月初めにリリースされましたね。今回の来日の目的について教えてください。
von Tetzchner氏: Vivaldi 1.0は4月6日にリリースしました。今週1.1をリリースすることになっており(注1)、これをフォローするのが目的です。
Operaの時代から日本のユーザーはとても熱心で、Vivaldiでも日本にしっかりしたコミュニティが立ち上がっています。ユーザーの意見やフィードバックを聞くためにいくつかの方法を用意していますが、コミュニティと実際に会ったり、プレスと会うことを大切にしています。日本の後は、欧州を回る予定です(注2)。
注1:「Vivaldi 1.1」はインタビューが行われた2016年4月26日に公開された。【関連記事】Webブラウザ「Vivaldi」バージョン1.1が登場、タブ周りを強化 注2:公式ブログ「VIVALDI BLOG」にて、この後ロンドン、パリ、ブリュッセル、オスロを巡った記録が紹介されている |
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――Vivaldiは、2015年1月に最初のテクニカルプレビュー版が登場しています。それから1年以上もテクニカルプレビュー版として機能追加が続けられてきました。Vivaldi 1.0をこのタイミングでリリースした理由はなんでしょうか?
von Tetzchner氏: 2015年初めにテクニカルプレビューをリリースし、同年末にベータ版を公開しました。その後もたくさんの機能とオプションを加えながら、バグの修正と安定性の強化を図りました。表示スピードの改善も重要な作業でした。
今回、ソフトウェアが安定したことと、スタート地点として良いと判断したので1.0としてリリースすることにしました。他の人に勧められるレベルになったという判断です。
ですが、スタートしたばかりです。新しいバージョンを6週間おきにリリースする計画で、新しい機能が加わり、フィードバックをベースにオプションも加えます。我々にはたくさんの作業リストがあります。
――今後どんな機能が加わるのでしょうか?
von Tetzchner氏: 予定のひとつとして、メールクライアントがあります。理由は、Operaでもメールクライアントへのニーズは高かったということと、メールをやっているところがほとんどなくなっているからです。モバイルではいくつかの選択肢がありますが、PCではほとんど選択肢がない状態なのです。
Webメールを使っているという前提なのでしょうが、多くのユーザーが複数のメールアカウントを持っており、それぞれのアカウントを別にしたい人もいれば、合わせて管理したい人もいます。我々は統合的に管理したいというユーザーにフォーカスしたメールクライアントを構築したいと思っています。
実はもうかなりの作業が進んでおり、社内で数人が試用していますが、まだ公開できる段階ではありません。
――メールについては、最初のテクニカルプレビュー版から、未実装ながらメールタブが用意されていましたね。メッセンジャーのような機能は今後実装しますか?
von Tetzchner氏: 段階的にそのような機能を検討していきます。
ユーザーから多くのリクエストをもらっていますが、限られたリソースで取り組んでいるところです。ユーザーが求めているものを実現したいので、開発することに意味があると判断したら開発します。
タブの管理などは簡単ですが、メールやメッセージングでは、どんな機能を実装するのかなど、たくさんの意思決定が必要です。Vivaldiの基本は使いやすいソフトウェアを作ることです。技術的に高度なものは使うのも難しい、というわけではありません。簡単に使えることと複雑な作業をこなすこととは両立可能だと思っています。これにフォーカスしながら、少しずつ機能を広げていくことになります。