顧客のデータを統合分析してメール配信を行うシステムを構築

MA製品を選定するにあたっては、「柔軟性」「拡張性」「自由度」が重視された。柔軟性はアプローチ条件を柔軟に設定・変更することで、高度なPDCAサイクルを可能にするデータ設計を実現することを指す。拡張性とは、アウトプットを外部システムに自動的に連携できることを、自由度はニーズに合わせてパーソナルなメールが配信できることを指す。

一方、基幹系システムでは既に直営販売チャネルの「顧客情報」「購入履歴」などが一元管理されており、分散した顧客の行動情報を統合的に分析して、アウトプットにつなげられる仕組みが必要だった。

こうした背景の下、顧客の行動データを活用して効果的なアプローチを可能にするシステムとして、新たなメール・マーケティング・システムが導入された。

新システムには、Webのアクセス解析システム、イベント自動化システム、メール配信システムが追加された。これらのシステムから収集したデータはSAS Marketing Automationに集約・加工して、イベントベースによるアプローチを実現したという。

ファンケルの新メール・マーケティング・システム

新システムでは、シナリオに応じてメールが配信される仕組みがとられている。2013年11月は6つのシナリオでスタートしたが、PDCAサイクルを細かく回しながら、2016年11月の時点で約40までシナリオが増えたという。

佐野氏は、シナリオの例として「新規購入者フォロー」「商品継続促進&離反防止」「クロスセル」「カート放棄」を紹介した。例えば、以前は顧客が商品をカートに入れたまま、購入せずに離脱してしまっても気づくことはできなかったが、カート放棄のシナリオを導入したことで、顧客が商品をカートに入れたまま帰ってしまった行動を検知、自動的に提案メールを配信し、販売機会を作ることができるようになったという。

「カート放棄」のシナリオ

業務スピードの向上とコスト削減を実現

今回、イベント自動化システムを導入することで、パーソナルなメール、Webページの最適化、広告リターゲティング、LINEによるタッチポイントの運用が実現され、立体的なアプローチが可能になったそうだ。

加えて、これまではログデータが中心だった顧客のデータが、イベント自動化システムにより、趣味・志向、好み・習慣といった定性的データを拡充することが可能になり、より顧客の好みに合わせた提案ができるようになった。

佐野氏は、新システムによるメールマーケティングについて、「今までのメルマガを洗濯板のような手動対応にたとえるなら、新しいメールマーケティングは洗濯機のような自動対応と言えます」と語った。ただし、自動化によってできることが増えたため、業務は増えたのだという。

新システムの導入により、マーケティング担当者が自分で評価・検証を行って、即座に改善できるので、業務スピードが向上するとともに、コストが下がったそうだ。

また、メールの開封率も想定の2倍を達成するといううれしい誤算があったそうだ。これより、「お客さまはタイムリーでパーソナルなアプローチに予想以上に関心があることがわかった」と佐野氏。

オムニチャネルの取り組みとしては、メンバーズカードをスマホアプリに移行することで、スマートフォンにPush通知が送ることが可能になるなど、店舗とWebの融合が図られるようになったことが紹介された。

メールマガジンを発行しているものの、開封率が上がらず、商品の購入につながらないなど、悩んでいるマーケティング担当者も多いと思う。ファンケルの事例は参考になるのではないだろうか。