2020年をどう見ているか

安全性も重視しながらの運営だが、2020年の東京五輪というのはひとつの区切りとして重要な時期になる。その時点での目標はどのように置いているのだろうか。「面的広がりを成長と見るか、あるエリアを密にやるべきか。我々としてはまずは、現在実施している東京都心部のサービス品質をより高めていくことを重視しています。台数が増えれば当然、管理も品質維持も大変になりますが、我々の事業としてエリア密度は非常に重視していて、密度が高まることでどこでも見られる、乗れる、といういいフィードバックループが生まれてくると考えています」。

2016年4月からは東京4区内の相互利用の実証実験を開始。写真は千代田区のステーション。サドルの色が違うなど車両のわずかな違いから他区の自転車が乗り入れていることがわかる

事業の採算は取れているのか?

サイクルシェアリングの料金は、利用者が多い一回会員の場合、最初の30分が150円、その後の30分利用するごとに100円の追加料金がかかる。いくら自治体の事業とはいえ、よほど回転率がよくなければ採算が取れないのではないだろうか。これについて、正確な数字は出せないとしつつ、全サービスで利用されている自転車の台数は2500台以上。2014年度は55万回の利用があったという。この数字について坪谷社長は「想定を上回る状況が続いている」と評価する。

「我々のビジネスは基本料金が無料(一回会員の場合。プランにより基本料金がかかるものもある)なので、会員数よりも、携帯電話の電波と同じで、利用回数がどれだけ高くなるかがポイントです。そういう観点からは、思ったよりも皆さんに使っていただいていると言えます。ただし、もっと自転車に乗ろう、サイクルシェアリングを使おう、という利用シーンやそのためのサービスメニューを企画していく必要を感じています」。繰り返しになってしまうが、今はまだ採算をとることよりも、周知されることが重要だということだろう。

走行データの商用利用は?

自転車の走行を監視・管理できるという点では、走行データをビッグデータとして商用活用するという発想もある。都市部への自転車の流入データは、自動車と比べるとはるかに量が少なく、貴重なデータとして将来性が見込まれるのだという。こうしたデータやシステムの活用の大切さについても触れつつ、それ以上に重要だと強調するのが安全性だ。

自転車の場合、安全性をシステム任せにすることはできず、交通五則など、人間が気にしなければならない点が多い。パンフレットを作ってもシステム周りの説明よりもこうした安全情報に多くを割かれることになり、「ドコモという名前ながら、アナログなこと、地味なことばかりやっています」と苦笑する。ITの世界にいるとどうしても数年で利益を上げて……という発想になってしまうが、ドコモ・バイクシェアではもっと長いスパンでの事業展開を、腰を据えて考えているようだ。