「LINEが無料」は他のMVNOが追随する可能性あり

LINEモバイルがMVNOに大きな影響を与えるとすれば、料金よりもむしろ、LINEが無料で利用できる点だろう。

特定のサービス利用時の通信料を無料にするサービスは、LINEモバイルのほか、ジュピターテレコムの「J:COMモバイル」や、プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」「FREETEL SIM for iPhone」などで既に実施されている。前者であれば自社の動画配信サービス、後者であればLINEなどのメッセンジャーアプリや、App Storeの通信料が無料になる仕組みだ。

J:COMモバイルでは、自社の動画配信サービス「J:COMオンデマンド」利用時は通信料がかからない仕組みを用意している

だがこれらのサービスは、まだ市場シェアが大きくないこともあって、現在のところそうした仕組みが大きな注目を集めるには至っていない。しかしながら既に高い知名度を誇るLINEが、LINEを無料で利用できるサービスを提供するとなると、ユーザーに与えるインパクトは非常に大きなものとなるだろう。さらにLINEモバイルがヒットした場合、他のMVNOも同様に、特定のアプリやネットサービスだけを無料で利用できる仕組みを提供する可能性が高まってくる。

既に全てのネットサービスを定額で利用できる通信サービスを提供するMVNOはいくつか存在するが、その場合回線にかかる負担が大きくなり、通信速度が遅くなってしまうことからユーザーの不満を高めやすい。だが定額の範囲で利用できるアプリを特定のものに絞り込めば、回線の負担はそこまで大きくはならないだろうし、料金面以外で他社との差異化もしやすい。MVNOにとってメリットが大きいだけに、LINEモバイルが人気となれば、この仕組みを導入するMVNOは増えていくものと考えられる。

ただ、こうしたサービスが増えれば増えるほど、問題となってくるのが「ネットワークの中立性」と「通信の秘密」である。例えばLINEの利用が無料になるMVNOが多数派を占めた場合、LINE以外のメッセンジャーアプリが利用されなくなり、他のアプリとの競争を阻害し、LINEの寡占を生んでしまう可能性が高まる。また無料対象アプリからの通信かどうかは、ユーザーの通信を特定の手法で参照することにより、判断している。それゆえユーザーの通信をどこまで参照したらいけないのかという線引きがない状態で、こうしたサービスが広まってしまうと、なし崩し的に通信の秘密が失われてしまう可能性だってあるのだ。

こうしたさまざまな問題があるにせよ、LINEはMVNOとして最後発に近い立場だけあって、インパクトのあるサービス内容を打ち出してきたことは確かだ。それだけに、LINEモバイルの実際のサービス内容がどのようなものになるか、そして今回打ち出した施策がどこまで他のMVNOに影響を与えるのか、しっかり見届けておく必要がありそうだ。

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