米国のスターバックスは、音楽をカフェの環境に取り入れてきた。2000年代には、スターバックスのジャズなどのコンピレーションアルバムで小気味良いものも多くリリースされた。また、iTunesと連携して毎週アルバムを無料でダウンロードできるコードを配布するなど、様々な取り組みを行ってきた。

現在、米国スタバのモバイルアプリでは、アプリのデジタルコードを配布するようになったが、音楽についてはSpotifyと連携。店内で流れている音楽のプレイリストを、モバイルアプリ内で聴けるようにし、同じ曲目リストをSpotifyでも聴けるようにした。ここでも、音楽のサービス化による新しいビジネスを、Spotifyが切り拓いている様子がうかがえる。こういったサービスにApple Musicが食い込めるかどうか注目したいところではある。

その他に興味があるのは、Podcastなどのコンシューマーが作成するコンテンツでの活用だ。Podcastで最も困るのは音楽で、BGMに使うとしても、フリー音源を探してくる必要がある。例えば流行の音楽を紹介する番組を作りたい場合、曲名を紹介しつつ、似た雰囲気の音楽をGarageBandで作ってBGMにするのが限度といえる。

SpotifyやApple Musicによって、音楽に直接リンクできるようになったことから、Podcastの中にリンクを仕込み、曲に興味がある人はそのリンクからどうぞ、というサービスを行うことはできるようになった。しかしPodcastアプリには、リンク先のApple Musicを聴きたい分数再生して、再びPodcastのトークに戻る、なんて機能は実装されていない。

音楽のサービス化は、著作権処理ができるマスメディア以外に、音楽を活用したコミュニケーションやコンテンツの可能性を多分に含んでいる。Appleも、より柔軟に、膨大な音楽カタログとユーザーのアイディアを生かす大勢を、早く作り上げて欲しいところだ。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura