3月2日~4日の期間、東京ビッグサイトで「スマートエネルギー Week 2016」と総称される展示会が開催されている。西ホール1の一角とアトリウムを使った「第2回 電力自由化EXPO」から、エンドユーザー向けの話題を集めてみよう。

第2回 電力自由化EXPO会場。比較的スペースは小さいものの、アトリウムも会場に使っておりブースが目立つ

一般家庭向け自由化開始目前の展示会。新電力会社とそれを支えるサービス

一般家庭において、電気をPPS(新電力会社)から購入できるようになるのは来月(2016年4月)で、いわば最終ラウンドのゴングが鳴る直前。今回、出展者数はそれほど多くなかったが、内容は熱かった。

まず、Looopは4月から始まる「Looopでんき」のおうちプラン、ビジネスプランを中心に展示。おうちプランの場合、提供エリアとなる東京と関西、および中部電力エリアのすべてで、基本料金「0」、1kWhあたり26円(税別、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金)というシンプルな料金体系を訴える。

基本料金「0」となるのは、2016年5月31日までに申し込んだ場合のみだが、状況に応じて申し込み期間の延長も検討するという。ブースでは、抽選で「一年間分の電気代(10万円)」のプレゼントを行っていた。

最大級のスペースを取っていたのがLooop。一般家庭向けのおうちプランと事務所商店向けのビジネスプランをアピール。電気が当たるクイズも

おうちプランの説明パネル。従来の段階性料金ではなく「基本料金ゼロで、使っただけ払う」というシンプルなプラン

検針票をもとに、乗り換えでどれくらいおトクになるかのシミュレーション

近畿電力/愛知電力は、地域密着型をアピール。「既存の電力会社を都市銀行とすれば、我々は地銀や信用金庫的のような小回りの利いたサービスを提供する」ということだった。

その小回りを支えるのが、アウトソーシングサービス。富士通コミュニケーションサービスは事業者のコールセンター等を引き受け、事例としてLooopの業務委託を受託しているという。また、関電システムソリューションズは電力小売事業者向けのコンサルティングと顧客情報管理システムを提供するという。

地域密着型をうたうのは、近畿電力と愛知電力。あえて営業地域を絞ることで。小回りの利いた営業体制とするようだ

関西電力のITシステム構築・運用を行っていたのは、関電システムソリューションズ。これまでのノウハウを生かしたコンサルティングと、顧客情報管理システムを提供する

規模の小さなPPS(新電力会社)が一般家庭向けへ乗り出す場合、サポート体制が問題となる。富士通コミュニケーションサービスは、コールセンターをはじめとするサービスの提供をすでに始めている

多くのPPSが登場すると「どこが一番良い?」となる。タイナビSwitchは、イギリスの規制当局(OFGEM)のガイドラインを参考に比較を行う。ちなみに「まだ各社のプランが出そろっていないので、いま契約するのは性急」だそうだ

既存の電力会社は攻めの体制、次に来る発送電分離を見越した展示も

一方、既存の電力会社はどうだろうか? 東京電力は、エリアを超えた営業活動と電力にとどまらない行動を示す。ガス会社との連携(現段階ではプロパンガス事業者)に加え、豊富なエネルギー輸入を生かしたLPG販売ビジネス、そして他の電力会社エリアへの進出と、攻めに出ている状況が見受けられる。

東京電力は自由化をチャンスとしてとらえる展示。これまでの営業地域を超えた販売体制のパネル

電力会社だけで、日本が輸入するLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)の3分の2を占める。東京電力だけで30%弱だ。そのスケールを生かしたガス販売にも乗り出す

一般家庭向けには各社とタイアップしたセットプランを提供

(おまけ)電力自由化にまつわる技術など

電力自由化の最終段階は、発電と配電を別会社とする発送電分離で、2020年から実施される。配電会社にとっては、配電ビジネスで利益を確保する必要性とともに、地域を超えた送電ビジネスが生まれるだろう。

日立製作所と東芝は、高圧直流送電システム(HVDC)を前面に出していた。日立製作所の説明員によると、交流送電は数百km以上の長距離、および50km超のケーブル送電などには向かないそうだ。また、周波数変換が必要となる東日本(50Hz)と西日本(60Hz)の融通を考えると、これからは直流送電の技術も必要になるとのことだった。

「コストを考えると民間投資に向きにくいのでは?」と、意地の悪い質問を投げてみたところ、「送電中継手数料ビジネスという手法を使うことで、国内だけでなく国際送電ビジネスの可能性が生まれる」と、ワールドワイドでの展開も見据えてるようだった。

次のステップは「送配電の分離」だ。電力の融通を高めて損失を下げるためには、高圧直流送電(HDVC)がキーになるという。こちらは日立製作所ブース

HVDCの説明。従来は発電所から家庭まですべて交流で送電していたため、特別な施設がないと、東日本(50Hz)と西日本(60Hz)で電力を融通できない。東日本大震災のあと、電力施設の容量不足が問題になっていた

融通性以外にも、交流送電よりも長距離の送電に向くことや、必要な電線が一本減るといった直流送電のメリットを強調していた

東芝ブースでもHVDCに関する展示

東芝システムプラントブース。カーボンニュートラルなバイオディーゼル発電をアピール

こちらも東芝ブース。余った電力で水を電気分解し、水素と酸素として貯めておくき、必要なときに電力と温水を取り出すH2Oneシステム。災害時利用や水素自動車への利用が想定されている

ニチコンブース。家庭向けの蓄電システムで本体内に12kWhの保存が可能。太陽光パネルのパワーコンバーターを内蔵し、変換ロスを減らすという。近日発売予定