長年にわたり、"国産ワープロソフト"という存在感を示してきた「一太郎」シリーズ。2015年に30周年を迎えたが、2016年も最新版「一太郎2016」を2月5日にリリースした。昨今のユーザー環境に合わせて、モバイルデバイスや高DPIへの対応強化、文書校正機能や改行削除といった文書作成の効率アップを盛り込んだ。「一太郎2016プレミアム」を用いて、新機能を中心に見ていきたい。

エディション構成は?

OSのプラットフォームがDOSからWindowsに移行してからというもの、Wordの台頭によって劣勢を強いられている一太郎シリーズだが、根強いファンは大勢いる。2016年最新となる一太郎2016は数々の新機能を搭載してきたが、まずはエディション構成から紹介しよう。

例年どおり、一太郎本体となる「一太郎2016」、そこにモトヤフォントやATOK用電子辞典、音声読み上げソフト「詠太6」などのアプリケーションを組み合わせた「一太郎2016プレミアム」、さらに「ブリタニカ国際大百科事典 小項目版 2016」や「ブリタニカ・オンライン・ジャパン 利用権」、「一太郎開発者監修ガイドブック とことん一太郎」を同梱した「一太郎2016スーパープレミアム」という3エディション構成だ。すべてのエディションに、「らくらく新聞テンプレート&本格新聞書体(2書体)」が付属する。詳しくは公式サイトをご覧いただきたい。

左から「一太郎2016」「一太郎2016プレミアム」「一太郎2016スーパープレミアム」

ブリタニカ国際大百科事典は一部のユーザーに取って興味深い存在だが、一太郎本体の機能とは直接関係ないと判断し、今回は「一太郎2016プレミアム(以下、一太郎2016)」を使って、新機能を確認していく。

スマートフォン・タブレットで便利な一太郎モバイルビューイング

一太郎2016の新機能は、機能面・表現力・文書作成力・EPUB編集の4つに大別できる。機能面でもっとも変化に富むのが「一太郎モバイルビューイング」の存在。文字どおり一太郎2016で作成した文書ファイルをスマートフォンやタブレットで閲覧するというものだ。

一太郎2016からJustアカウントを用いてサーバーにログインし、現在開いている文章ファイルをアップロード

出先での書類内容確認や、大きめのタブレットでゆっくりと文章を読むといった場面を想定していると、ジャストシステムの担当者は発表会で説明している。

ユーザーは一太郎2016の専用メニューからサーバーにアップロードし、専用アプリケーションからダウンロードして、閲覧を実行する。こうした仕組みのため、両者でJustアカウントによるログイン処理が必要だ。

実際に使ってみるとフォントやレイアウトも正しく再現され、社内の書類を一太郎シリーズで管理しているユーザーなら便利に使えるだろう。サーバーにアップロードした文書ファイルは約1カ月で自動削除されるため、その前にダウンロードしなければならない。

専用アプリケーションはiOS版とAndroid版が用意されているが、無償での試用期限が設けられているため注意が必要だ。執筆時点では2019年3月末までとなり、それ以降は何らかの形で有料化すると思われる。

iOS用「一太郎2016モバイルビューイング」。最初にサーバー上のファイル一覧が現れる。未ダウンロード時はダウンロードアイコンが現れる仕組み

文章ファイルを開くと一太郎2016で指定したフォントを使って閲覧できる。タッチ操作でページをスクロールさせ、全画面表示や他のユーザーと共有も可能

あらかじめ目次を作成した文書ファイルの場合、「目次」ボタンで各ページへ簡単にジャンプできる。ページ移動は「ページ一覧」ボタンからも行える

一太郎2016本体側も、"見る・読む"というコンセプトを強化し、「タブレットビューア画面」という機能を新たに搭載した。こちらはデタッチャブル型2-in-1 PCのように、PC本体からキーボードを外した状態で文章に集中するため、不要なUIを取り除いた表示形式だ。

こちらが「タブレットビューア画面」に切り替えた一太郎2016。「表示」メニューから「タブレットビューア画面」と選択しても切り替えられる(クラシックタイプメニュー使用時は「表示」→「オリジナル-タブレットビューア画面」)

Surface Pro 4に一太郎2016をインストールして動作を確認したところ、はじめはタブレットビューア画面に切り替わらなかった。これは「設定」-「システム/タブレットモード」に並ぶ、「デバイスがタブレットモードのオンとオフを自動的に切り替えるとき」の設定が、「確認せず、切り替えも行わない」だったためである。

Windows 10の設定を変更した状態でキーボードの脱着を試すと、画面モード切り替えの確認をうながすダイアログが現れる

これらの設定を変更したところ正しく動作し、タブレットビューア画面に切り替わった。ジャストシステムの担当者も「Windows 10の機能を使用している」と述べていたことから、Windows 10のContinuumを検出し、画面モードの表示切り替えを自動的に行っているのだろう。

2,736×1,824ピクセル環境で200パーセント(192DPI)にした状態。アイコンなど各種UI要素が高DPI環境に対応した