続いて、リケーブルののちDP-X1とXDP-100Rをバランス接続して試聴を開始。余談だが、試作品のORB製バランスケーブルはMMCXタイプとはいえ、SRH-1840との接続を事前に確認しないぶっつけ本番でのリケーブルであった。が、幸いコネクタ部分が細身だったため、ケーブルにテープを巻き嵌合の緩さを補強した程度で済んだ。バランス接続を検討しているのならば、このようなリスクを犯さず自分の愛機に適合するかどうか入念に確認してほしい。

その出音だが、アンバランス接続のときと比較すると「見える世界が変わる」かのよう。ケーブル素材の違いはあるにせよ、音場のワイド感、中高域方向の解像感と伸び、一音一音の輪郭と佇まいにも違いがはっきりと現れる。リファレンス機として聴き慣れたSRH-1840の印象は一変、ひと皮向けたかのような新鮮味を覚えた。

特筆すべきは「アクティブ・コントロール・グランド(ACG)駆動」だ。一般的なBTL駆動でも充分バランス接続のメリットを感じられるが、ACG駆動に切り替えると出音は明らかに精緻さを高め、ホーンセクションの艶もウッドベースの弦のたわみもリアルさを増す。BTL駆動と比較した再生クオリティ面でのメリットは明らかで、バッテリー消費量にも変化がほぼない。特段デメリットも見当たらないことから、バランスケーブルに交換したあとはACG駆動固定でもよさそう、というのが率直な感想だ。

DSDの出力形式は「PCM」と「DoP」、「ダイレクト変換」から選択できる

DP-X1ではバランス接続時の駆動方式を「BTL」と「ACG」から選択できる

DSD 11.2MHz再生を試すべく、OTGケーブル経由でポータブルアンプ OPPO「HA-2」への出力も行った。注意点は特にないが、HA-2の場合DSD 11.2MHz再生はダイレクト転送時のみ(DoP非対応)となるため、事前に設定を確認しておきたい。なお、HA-2は4極バランス分離出力に対応するが、3.5mmの4極ステレオミニ端子を備えるケーブルが必要であり、今回は考慮しない。

このDSD 11.2MHz再生は、DP-X1とXDP-100Rに共通するアドバンテージだ。もちろん、DSD 11.2MHz再生に対応するUSB DACを用意すればの話だが、両機ともにDSDネイティブ再生を堪能できる。値ごろ感のあるXDP-100Rでもまったく差異がないこともポイントだ。USB DACへの出力となるため、携帯性や機動性は一気に低下してしまうが、ポータブルオーディオとしての愉悦は深みを増すはずだ。

USB DACが認識されると、対応周波数などの情報が表示される

XDP-100RにUSB DAC(OPPO HA-2)を接続、DSD 11.2MHzの音源を再生しているところ。PCM変換されていないことがわかる

最後に、DP-X1とXDP-100Rどちらを選ぶべきかだが、結局のところ「バランス接続を目指すかどうか」という話に集約される。直接のヘッドホン出力はPCM変換となるが、DP-X1のバランス接続、特にACG駆動はこのクラスのDAPとして明確な個性となる。その音も分離感といい解像感といい魅力的、というより明らかにステージが変わる。バランス接続を重視するならDP-X1で決まりだ。

だが、DSD再生にこだわるのなら話は変わる。DP-X1とXDP-100Rとも一種のトランスポートとして動作させることになるため、最終的な出音は(DSDネイティブ再生に対応した)USB DAC次第となるからだ。アンバランス接続のヘッドホンで楽しもうという場合も、良好なS/Nとソリッドな音の傾向はXDP-100Rでも大きく変わらないため、そのコストパフォーマンスが際立つことになる。こちらも選択肢としてかなり魅力的だ。年の瀬に大いに迷っていただきたい。

バランス接続を目指すかどうかが、DP-X1とXDP-100Rのどちらを選ぶかの決め手になるだろう