テレビの機能をすべて Apple TVが奪う?!

もう一つ、使ってみて「なるほどこれはいい」と思ったのが、他の機器との連携だ。

例えば、新リモコンには「音量の変更」ボタンが付いている。これは、HDMIが持つ機器連携機能「HDMI CEC」を使い、テレビ側の操作を行うためのボタンだ。Apple TVの電源が入るときには、自動的にテレビの電源も入り、Apple TVの画面に変わる。これもHDMI CECによるものだ。

HDMI CECは決して珍しい技術ではなく、日本の家電ではテレビとレコーダーの連携に使われている。だがApple TVの場合、「テレビの側のリモコンは、Apple TVを使っている限り使わせない」という設計思想が行き届いており、実際、Apple TVしか使わないなら、テレビのリモコンの出番はない。HDMI CECがなんなのかを知る必要はなく、「とにかくSiri Remoteでテレビが操作できる」ようになっているわけだ。

外部機器連携も同様だ。Bluetoothのヘッドホンやスピーカーと連動し、音はテレビでなく、すべてそちらから出すことも可能だ。より高音質を求めるなら、AirPlay対応スピーカーも使える。これらの機器をコントロールする場合にも、音量の制御がSiri Remote側に移るため、とても使いやすい。

音声切り替えの例。Bluetoothと AirPlayに対応、テレビ以外から音声を出せる。すべての操作はSiri Remoteに集約されるので使いやすい

アップルの設計思想は明確だ。「動画配信を中心に使うなら、テレビの機能はすべてApple TVでよりよく代替できる」と、アップルは主張したいのだろう。事実、映像配信大国のアメリカならば、多くのシーンでそうなる。

日本の場合には、テレビ放送の生視聴や録画視聴もあり、Apple TVだけで済ますのは難しい。そもそも、Siri Remoteには「入力切替」ボタンがない。「全部Apple TVで」という思想ならいらないものだが、そうでないと、別の機器を使うときはリモコンの持ち替えが必須だ。逆にいえば、そこまで「動画配信大国」に特化した設計である、とも言える。

しかし、アプリで機能が追加できるということは、そうした状況を変化させられる、ということでもある。テレビ番組の見逃し配信は日本でも増えているし、HDDレコーダーの録画コンテンツを視聴するアプリは、iOS向けにもいくつもある。NHKはネットで放送番組をそのまま配信する実験もスタートした。そうした動きに「アプリ追加で対応」していけるのも、Apple TV 2015年モデルの優位点といえそうだ。

こうした機能を「テレビの中に入れるべきか」「外にボックスとしてつけるべきか」という論争は、家電業界の中で根強く存在している。アップルは明確に「外付けにすべき」というアプローチを採り、その象徴として、tvOS採用の新Apple TVを作った。「内蔵」を推進するテレビメーカーとしても、これに対し、競争力のある回答を示す必要がある。

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