実は「プラットフォーム」になっている!

一つは、「メガネとしてかけたくなる」ことだ。ディスプレイ型のスマートグラスと違い、センサー型のスマートグラスは、四六時中かけて、大量のデータを得られてはじめて価値が出る。また、JINSが狙うように「メガネ」として大量に売れるには、メガネとして自然であることが求められる。

その点では、JINS MEMEはかなり成功している。ウェリントンタイプのクラシックな外見だが、かけてしまえばメガネとしてはごくごく普通のもの。スマートグラスという「ITガジェットらしさ」はほとんど感じられない。

JINS MEME ウエリントンタイプの装着イメージ

デザインを担当した工業デザイナーの和田智さんは「普通であることがコンセプト。正面から見て違和感がないことを目指した。いつもかけていられるものでないといけない」と話す。

外観ではわからないが、デザイン上の工夫はいくつもある。「実は、ハードウエアはプラットフォームになっている」と和田さんは言う。

メガネはファッションに紐付いている。人の個性を演出するものであり、本質的には「一人一人違うものをつける」ことが望まれる。JINSが成功したのも、低価格かつ膨大なバリエーションのあるメガネを供給したところにある。

JINS MEMEは現状、スポーツ向けと一般向けの2バリエーションしかなく、ファッション性という面では厳しい。和田さんの考える「プラットフォーム化」とは、メカ部とメガネ部をうまく切り分ける構造を指す。

JINS MEMEの構造はプラットフォーム化されているという

電池やBluetoothモジュールはメガネの「ツル」に入っていて、レンズフレームは別に作れる。眼電位センサーはノーズパッドにあるため、レンズ側のフレームに配線を仕込む必要があるのだが、実はフレームが上下に分割した構造になっていて、配線が絡む作りになるのは片方だけ。半分を変えることで、デサインバリエーションは広げやすい。

「仕組みとしてはバリエーションを作れる構造にある。ただし、その構造を使うかどうかは別の話」と和田さんは釘をさす。現状のJINS MEMEでデザインバリエーションを広げる計画はないが、準備は進んでいるようだ。プラットフォーム化とメカ部の小型化を進めることで、最終的には「すべてのメガネに入れられる世界」を目指すのだろう。

JINS MEME スポーツサングラスタイプの装着イメージ