日本マイクロソフトは9月2日~4日にかけ、ザ・プリンスパークタワー東京で「FEST2015」を開催した。サブタイトルは「革新とその先への共創」。各日で異なった内容のキーノートとブレイクアウトセッションを行なったほか、パートナー各社による新製品やソリューションを中心とした展示もあり、マイクロソフトの取り組むビジネスやテクノロジについての最新動向や活用事例などについて理解できるイベントとなった。

マイクロソフトの3つの注力ポイント

2日目となる9月3日のキーノートは「企業に求められるビジネス変革とは。ITで何を変え、何を始めなければならないか?」と題されたもので、昨今話題となっているワークスタイルの多様化・変革を実現するために、マイクロソフトのテクノロジがどう貢献して行くかについて紹介。

2時間におよぶキーノートの中では、ユーザー企業からの自身が導入事例を語るシーンやメッセージ動画の再生などもあり、多くの活用事例に触れられた。

最初に登壇したのは、日本マイクロソフト 代表執行役社長の平野 拓也氏。米MicrosoftのCEOにサティア・ナデラ氏が就任して以来、Officeの無償化やWindows 10の無償化をはじめとして同社が大きく変化してきていることを紹介。

「会社は大きくなったが、一方で守りに入ってしまったのではないか。Windowsのプラットフォームへようこそというところで壁を立ててしまったのではないか」と語った上で、ナデラ氏の掲げたビジョン「地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする」を紹介。「Microsoft自身も戦略、オペレーション、組織といった観点やカルチャーを含めて、どんどん変革を進めている」とした。

その中で日本マイクロソフトの方向生については「革新的で親しみやすく、安心できて、とにかく喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供と会社となり、オペレーションをしたいと強く思っている」とアピールした。

具体的な話題としては、3つの重点分野として「プロダクティビティとビジネスプロセス」、「Windows 10 +デバイス」、「インテリジェントクラウド」を挙げ、それぞれの事例を紹介した。

日本マイクロソフト 代表執行役社長 平野 拓也氏

3つの注力ポイント

「プロダクティビティとビジネスプロセス」については、Surface Hubの日本航空での導入事例を紹介。従来は大きなホワイトボードにマグネットシートを貼り付け、ベテラン社員が工程組みや整備士配置を行なっていた。

ベテラン社員のノウハウが十分に反映され融通も効く手法だが、内容がデータとして蓄積されず、実物を見なければ確認できないことが課題だったが、これを解決するためにSurface Hubが採用された。

従来の現場作業を紹介する日本航空 整備副本部長兼株式会社JALエンジニアリング 常務執行役員 北田裕一氏

日本航空におけるSurface Hub活用イメージ

「Windows 10 +デバイス」については「最初の1カ月で7500万台のデバイスでWindows 10が動作しているという状況になり、毎日どんどん増えている。当初の見込みよりかなり早いテンポで進んでいる」と順調であることを示した後、早期導入事例としてセブン&アイ・ホールディングスがSurface 3を200台導入したことや、大和ハウスとベネッセホールディングスがWindows 10の導入を表明したことを紹介した。

Windows 10の早期導入事例と、導入表明企業

「インテリジェントクラウド」としては、Machine Learningの取り組みを解説。パーソナルアシスタント「Cortana」や、人工知能女子高生「りんな」の事例などが紹介された。

Machine Learningの取り組み

続いて登壇したのは、日本マイクロソフト 代表執行役会長の樋口泰行氏。「変革はどこの会社でも求められているのではないか」とした上で、IT活用による変革を実現している企業事例を紹介した。

経営におけるITの重要性と企業の対応については「経営者自身が企業戦略上ITを強く意識するようになってきたことが感じられるし、ITにまつわる意思決定者が事業部門にもシフトしているのではないか。会社によっては経営そのもの。IT人材を社内に持って、戦略的に考えて、競争優位性を社内にため込んで行こうと考えている企業も増えている気がする。コモディティ化したITはセキュアな形で外出しをする、クラウド化するという形に変わってきている」と語った。

日本マイクロソフトの今後については「ICTが差別化を後押しする時代におけるニーズをシームレスにつなげる形でお届けできる企業になりたい」とまとめた。

日本マイクロソフト 代表執行役会長 樋口泰行氏

採用広がるOffice 365

ユーザーのビジネス変革の課題に対して、具体的にどのように貢献して行くのかについての紹介は、冒頭に挙げた3つのポイントに添って行なわれた。「プロダクティビティとビジネスプロセス」について語ったのは、マイクロソフト コーポレーション Corporate Vice President, Apps and Services GTM Marketing John Case氏だ。

「我々は設立当初からプロダクティビティとビジネスプロセスの改善を手がけてきた。特にMicrosoft Officeがそうだ。25年前から出し続けてきて、日本でも利用されてきた」と語った後、日本のビジネス環境が大きく変化してきていることを指摘。

その変化に対応するためにOffice 365を採用しているユーザーの事例として、ヤフー、資生堂、日立のインタビュー動画を紹介した。その中で語られたのは、コミュニケーションとビジネスプロセスを改善することは成功に欠かせないということだ。

「現在Officeは全ての世界の、全てのプラットフォームに提供している」とOfficeシリーズが世界のビジネス環境に深く浸透していることをアピール。マイクロソフトとしてもOfficeとクラウドによってコミュニケーションやコラボレーションを行ないやすい環境を構築していることを語った。

マイクロソフト コーポレーション Corporate Vice President, Apps and Services GTM Marketing John Case氏

その実例としてのデモンストレーションも行なわれた。クラウドベースの分析ツール「Delve」は、クラウド上で作業しているとユーザーに必要そうな情報を示してくれるため、有用な情報への簡易なアクセスが実現される。

デモンストレーションでは売上のデータをローカルの「Excel 2016」で開き、将来の予測を自動的に行なってくれる様子が紹介された。クラウドがチームの業務をトラッキングして分析を行ない、クライアントが予測を行なうという連携だ。

「Delve」の分析によるデータ活用提案

「Excel 2016」に搭載される予測機能のデモンストレーション

また、クラウドを活用するにあたって課題となるセキュリティについても語られた。

「ユーザーのデバイス、データを守る仕組みを作っている。来年は各企業が独自の暗号鍵を導入できるようになる。またさらにデータ保護も強化、データセンターの冗長性保護や災害対策もしている。日本の法律や要件を満たし、厳しいポリシーを設けている。我々のマーケティングのために顧客データを活用することも一切ない」(John Case氏)

すでに7500万DLに達したWindows 10

「革新的なパーソナルコンピューティング体験」と題してWindows 10について語ったのは、マイクロソフト コーポレーション General Manager, Windows Brand & Product Marketing Jeremy Korst氏だ。

マイクロソフト コーポレーション General Manager, Windows Brand & Product Marketing Jeremy Korst氏

「我々は未知の大きな野心を持っており、ビジネスの変革を推進しようとしている。プロダクティビティおよびビジネスプロセスの改善、インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築、新しくよりパーソナルコンピューティングの向上を実現するという野心の第一歩がWindows 10である」と語った。

Windows 10がビジネスにもたらす価値としては「効率的に多くのことをできることによる、企業の生産性向上」、「最新のセキュリティ脅威に対する対策」、「革新的なデバイスの提供」、「継続的な革新に向けた柔軟な管理」という項目が挙げられ、各項目に対するWindows 10の特徴的なポイントの紹介が行なわれた。

Windows 10がビジネスにもたらす価値

Windows 10のデモンストレーションでは、ユーザーの強い要望によって復活したスタートボタンと、その新しい使い方、操作やアプリを検索して利用する手法などが紹介され、古いものと最新のものをうまく組み合わせた作りになっていることがアピールされた。また、顔認証によるログオン「Windows Hallo」についても実演された。

クラウド化はサポートが重要?

最後に登壇して「インテリジェントクラウド」の事例について語ったのは、日本マイクロソフト クラウド & エンタープライズ ビジネス本部 業務執行役員である本部長 佐藤久氏だ。

日本マイクロソフト クラウド & エンタープライズ ビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏

「マイクロソフトのインテリジェントクラウドは、信頼性、柔軟性、統合性という3つのキーワードで、ビジネス改革・変革を強力にサポートする」とした上で、Machine Learningの活用事例を紹介した。

富士通九州システムズが畜産業に活用した事例では、牛専用の歩数計を開発して動きから発情期を予測し、人工授精を最適なタイミングで行なうことで子牛の誕生率が向上したという。また竹中工務店では、建物マネジメントのクラウド化を実現している。社内のノウハウをクラウドシステムに投入することで、ニーズに合わせたさまざまな建物管理を行えるようにし、新たなソリューションとして提供するという。

富士通九州システムズの牛歩システム

竹中工務店の次世代建物管理システム

イントロンワークスでは裁判の判例文書検索サービス「LEAGLES」を構築。自然文で検索するだけで、目的の判例・法律文書から目的のものを探し出すことができる様子が実演された。

実演を行なったイントロンワークス 専務取締役 新規事業開発担当役員の常間地悟氏は、多くのクラウドサービス中からマイクロソフトのものを採用した理由として「法律業界という固い業界を対象するため、大企業に信頼が厚いマイクロソフトのサービスが魅力だった。サポート体制が充実していると考えている。他社サービスだと自力解決やフォーラムに頼ることになりがちだが、マイクロソフトはサポートを受けたり、一緒に解決してもらえる」と語った。

イントロンワークスの自然語判例・法律検索サービス「LEAGLES」

末尾に平野氏が改めて「マイクロソフトは今後もますますモビリティ、デバイス、クラウドの世界が広がって行くと考えている。革新的で、親しみ安く、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスによって、ビジネスの変革に少しでも貢献できればと考えている」と語った。