高付加価値型テレビの力を生かす規格へ
Ultra HD Blu-rayの最大の特徴は、収録可能な映像の最大解像度が2K(1,920×1,080ドット)から4K(3,840×2,160ドット)になることだ。また、そこにHDRの情報が加わることで、明部・暗部の表現がより自然になる。色情報も、テレビのデジタル化以降標準的に使われてきた「BT.709」ベースから「BT.2020」ベースになり、特に緑・シアン方面での表現力が高まる。HDRと色情報の拡大は、表示される映像の純度に大きな影響を及ぼすだろう。暗い部屋から夏の海に出た時のきらめきや、澄んだ空・海の再現は、Ultra HD Blu-rayがもっとも得意とする分野になるだろう。
ただ、4KにしろHDRにしろ色域拡大にしろ、Ultra HD Blu-rayが率先して引っ張る領域とは言えない。高付加価値型のテレビやプロジェクターで開拓が進んでいるジャンルであるからだ。今の高付加価値型映像機器では、Blu-rayに入っている映像の情報を解析し、映像補正技術によって「解像感がある」「色が豊かな」映像を作り、最新のディスプレイデバイスで見せることができる。
それは「ありもしないデータを作っている」のではない。本来、映像には非常に多くの情報が含まれていて、人間がどう映像を感じるのかを分析したノウハウと組み合わせると、まだ画質向上の余地はある、ということだ。
そこで、データをさらにリッチなものにすれば、画質はもっと上がるし、今のデバイスの能力を生かすには、9年前と同じでは足りない。というわけで、4K+HDR+高色域+高音質が、Ultra HD Blu-rayに必須の要件となった。
「映像の所有」にこだわる人には「高画質」を
だが、ここで一つ重要な、別の変化もある。
9年前と違い、現在はディスクメディアの重要性が落ちつつある。記録メディアを使う頻度も減ったし、単に映像を見たいのであればネット配信でいい。日本ではまだディスクメディアが売れているように見えるが、海外、特にアメリカ市場では、広く一般向けに映像を配布するメディアとしては、ネットを使うのが当たり前になっている。登場から9年経ってもBlu-rayが普及していないのは、ネットメディアとのバッティングがあるからだ。
実際、4Kもディスクよりネットメディアが先行している。9月2日に日本でもスタートする映像配信サービス「Netflix」は、4Kでの配信を積極的に進める。また、HDRについても対応を予定している。規格策定を待ったり、多数のメーカーでハード開発をするのを待つ必要がない分、ネットのプラットフォーマーは素早く動ける。
単純に「映像を見る」なら、今後はディスクよりネットという時代になるだろう。それは4Kでも変わらないどころか、さらに加速する可能性がある。