直近のニュース記事をピックアップして、「家電的な意味で」もうちょい深掘りしながら楽しい情報や役に立つ情報を付け加えていこう……という趣向で進めている当連載。今回の題材はこれだ。
Ultra HD Blu-rayは、2014年から規格策定が進められ、2015年1月のインターナショナルCESの段階では、おおむね中身も決まっていたものだ。最終的な規格策定は6月に完了し、現在はライセンス提供を開始する段階に入った。Ultra HD Blu-rayの旗振り役であるパナソニックは、CESの段階ですでに試作機を展示しており、年末に向けた製品化も順調と見られている。
「Blu-rayも普及し始めたばかりなのに、もう次の規格なの?」。そんな風に思う人もいそうだが、今のBlu-rayの規格策定が完了してから、すでに9年が経過しており、DVDビデオからの移行期間が10年程度だったことを思うと、さほど短くはない。むしろこの9年に起きた変化を思えば、ディスクメディア技術としてのジャンプアップは小幅である。登場の背景にあるのは、ディスクメディアに求められるものの変化と考えていい。
物理メディアとしてのジャンプアップは小さい
Ultra HD Blu-rayは、ディスクの物理的性質としては、既存のBlu-rayと大差ない。3層までのメディアが想定されており、各層の容量は25GBもしくは33GBとなっている。だから、メディア容量としては25GBから100GBまでとなる。これは、現在記録用に使われている「BDXL」そのもの。Ultra HD Blu-rayは記録用ではなく配布用(ROM)規格なので、ディスクメディアとしての性質は異なるものの、技術的にはある意味で枯れたものである。DVDからの技術的なジャンプアップが大きく、いろいろなハードルが存在したBlu-rayの頃とは大きく異なる。映像を収録するためのコーデックや音声規格などはBlu-rayと異なるものの、そうした部分はソフトウェアでカバーすることも可能である。
とはいえ、Blu-rayに対応していても、Ultra HD Blu-rayを読み込めるドライブを搭載している機器は、世界レベルで見ると意外なほど少ない。海外では録画機のニーズがほとんどなく、BDXLは実質的に日本国内でのみ使われていたためだ。国内で流通している機器でも、PlayStation 3やPlayStation 4、XboxOneといったゲーム機はどれもBDXLに対応していない。
もともとBlu-rayはディスクを大容量化して、より高画質・高音質な映像を収録することを想定して開発されており、9年前の規格策定時期には「将来のより高度なディスクも想定する」との話があった。だから、CDからDVD、DVDからBlu-rayに比べると技術的な変更点は少なくて済んでいる。そういう意味では、当時の想定は正しかったのだ。
しかし、世界中に普及している機器でそのまま再生できるわけではないので、わかりやすくここで一区切りが必要。というわけで、Blu-rayの発展規格として、Ultra HD Blu-rayが登場することになる。