NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とBoxは6月16日、NTT Comの企業向けネットワークとコンテンツシェア・コラボレーションのためのクラウドサービス「Box」を組み合わせた新サービス「Box over VPN powered by NTT Communications(Box over VPN)」を提供すると発表した。(関連記事:クラウドがメインで、ローカルはサブに - Box開発トップが語る、これからのオンラインストレージ)

提供開始は年内を予定しており、Boxとの提携による閉域網接続サービスの提供は日本で唯一、アジアでも初の取り組みだという。NTT Comでは、これまでもMicrosoft AzureやAmazon Web Services(AWS)との閉域網接続サービスを提供しており、連携クラウドサービスのラインナップ拡充を図った形となる。

このサービスにより、ネット環境とは完全に切り離されたネットワークでクラウドとのデータのやり取りが可能となるため、ネットワーク上における重要情報の盗聴や漏えいの心配がなくなる。また、今後はモバイルデバイスとの連携も検討していくとしており、将来的にはNTTコミュニケーションズのMVNO回線との連携なども考えられるだろう。

両社は、ほかにもエンドツーエンドの一元保守体制を構築。閉域網内や各種業務アプリとの連携でトラブルが生じた場合でも、ヘルプデスクやデリバリー、オペレーターなどによるトラブル対応をワンストップで24時間365日で対応するとしている。

プランは「Business」と「Enterprise」の2種類が用意されており、どちらもスモールスタートでも柔軟に利用できるよう、1IDごとの課金になる。両プランともに、無制限のストレージサイズ、1つあたりのファイルサイズは5GBとなっている。

Businessは、社外ユーザーライセンスが有償で、他のSaaS連携ソリューションが1連携まで。月額料金は1IDあたり2400円(税別)。Enterpriseは社外ユーザーライセンスが無償となっており、他のSaaS連携ソリューションが無制限。また、利用ログなどのセキュリティレポートの発行サービスも付いて月額料金が1IDあたり4980円(税別)となる。

ビジネスを進めるためのクラウドコンテンツサービス「Box」

Boxは昨年から本格的に日本市場への展開を始めた。グローバルでは、映画製作の「LEGENDARY」やECサイト大手「ebay」、アパレル大手「GAP」などが導入、日本市場においても、短期間ながらDeNAやGREE、フジテレビ、セブンイレブン、LIXIL、早稲田大学など、幅広い業種、業態の企業が導入を進めている。

Boxがその他クラウドサービスと異なる点は、そのセキュアな環境にある。SSAE16SOC-1、Type II、HIPPA、SAFEHARBORなどのセキュリティ仕様に準拠している点はもちろんのこと、サービス設計思想そのものが、他のクラウドサービスと比べ、セキュアにできているという。

「クラウドサービスは本来、セキュリティ対策が進むもの。堅牢なデータセンターにデータを保存することでリスクを低減できるが、使い方次第ではそのメリットが薄れてしまう。他社のクラウドサービスでは、ファイルが複数のユーザーとそのデバイスで常に同期・共有される。確かに、即座にコンテンツを共有できるメリット、閲覧できるメリットはあるものの、それぞれのデバイスにデータが分散されてしまうため、安全性が高いとはいえない。

一方のBoxでは、データを同期することなく、クラウドにデータを全て持って行き、そこで集中管理する。このモデルには複数の技術的チャレンジがある。例えば、端末側にコンテンツをダウンロードすることなく、閲覧・編集を行う点、大量のファイルをクラウドで扱えるようにすることと、様々なコンテンツをクラウドに上げるからこそ、コンテンツを瞬時に検索できるようにしなければならない点だ。こうした点をBoxは全てカバーしている」(ボックスジャパン 代表取締役 古市 克典氏)

こうしたサービス設計は、モバイルネットワークの高機能化による接続性の向上や、グローバル化による企業のコラボレーションの促進、つまりスピード感が求められる現在のビジネス環境に即しているといえる。

また、NTTコミュニケーションズも今回のBox連携のベースとなるサービス「Arcstar Universal One」の契約回線が30万回線を突破、ガートナーやIDC調査でもセキュリティ事業者やネットワークサービス事業者として高評価を得ている。

「クラウドサービスは、セキュアに提供できることが大事。厳しいセキュリティポリシーを持ってる企業が、Boxを安心して利用できる環境を提供したい」(NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 庄司 哲也氏)

今回の発表や、ボックスジャパンのユーザーイベントのために来日した共同創業者でCEOのアーロン・レヴィ氏は、今回の両社によるサービス提供を通して、日本企業のビジネスを変えていく手伝いをしたいとその狙いを語った。

「今の世の中には、新しい仕事のスタイルが求められる。UberやAirbnbなど、新しい産業に繋がるサービスが、自分のビジネスにどのように影響するか考えなくてはならない。自動運転車が普及すれば、将来は自動車を所有することなくサービスとして利用する時代が来るかもしれない。こうしたトレンドを先んじるためにテクノロジーをどう活用していくか、企業は考える必要がある。

『お客さんに、どのように製品を提供するか』というポイント、家が繋がる、自動車が繋がる、新しい製品はどんどんネットワークに繋がっていく。繋がるほどにビジネスモデルも変わっていくだろう。リテールやオムニチャネル、マルチチャネル、様々な企業が個々の顧客と繋がっていく時代。

ネットワーキング型のコミュニケーションが必要となる中で、ユーザーとのインタラクションも変わっていく。こうした時に、ビジネスのコンテンツをどうスピードをもって管理していくか、どのように大きな形で管理していくか。これをBoxは提供していく」(レヴィ氏)

Boxは業界特化のコラボレーションソリューションをトップランナーの企業とともに制作していくという

NTT Comはラグビーチームを抱えており、両社の提携の証としてボールの受け渡しが行われた

(左から)ボックスジャパン 代表取締役 古市 克典氏、Box 共同創業者 CEO アーロン・レヴィ氏、NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 庄司 哲也氏、同社 アプリケーション&コンテンツサービス部長 菅原 英宗氏